予知するのに適切な未来はいつ?
もしあなたに未来が予知できるとしよう。ただし、知ることのできる未来の時間は、ピンポイントで決められている。それ以外の時間の未来はわからない。その時間を任意に選べるとしたら、あなたはどれくらいの時間に設定するだろう?
1時間後、あるは24時間後の未来。それとも半年や1年先だろうか?
これはけっこう難しい問題。なぜなら自分の行動と選択によって、未来は刻々と変わっていくから。たとえば1年先に理想的な未来が見えたとしても、その一瞬先の選択によって別の未来に変わるかもしれない。予知している未来があまりにも先だと、パラレルワールドに翻弄されてしまう。
人間工学的な観点からすれば、どれくらい先の未来がわかれば適切なんだろう?
その問いに答えてくれる映画を観た。
『NEXT -ネクスト-』という2007年のアメリカ映画。写真のニコラス・ケイジが主演していて、SF作家として数々の名作を残しているフィリップ・K・ディックの小説を映画化した作品。
この映画の答えは『2分』というもの。
主人公のクリスは、ラスベガスでショーをして稼ぐマジシャン。彼は2分先の未来が見えるという超能力を持っていた。だからショーでギャラを手にすると、能力がバレない程度の控えめな行動で、稼いだギャラをカジノで増やしていた。
ところがテロリストが核兵器を入手して、アメリカのどこかで爆発させるという計画が発覚した。そこでクリスの能力を知ったFBIは、彼を使ってテロリストの陰謀を阻止しようとする物語。
とてもよくできた映画で、『2分』先の未来を知ることによって次々と変化する世界がめちゃ楽しかった。たとえば2分先に銃で撃たれる未来が見えたら、すぐに回避することができる。知覚できる結果の原因を変化させることで、パラレルワールドへ移行していく過程が面白い。
そしてクリスの能力を楽しんでいるうち、映画を観ている人はある種のトリックにかかってしまう。そこはマジシャンだからね。
要するに映画で展開している世界が、クリスが予知している未来なのか、それとも現実に起きていることなのか分からなくなってくる。その錯覚をうまく使うことで、ラストにドンデン返しが待っていた。その瞬間、くそっ、やられた、と思ってニンマリしてしまう。
ニコラス・ケイジの演技は言うまでもなく、FBIのエージェントを演じたジュリアン・ムーアが最高だった。そしてクリスの運命の人であり、恋人となったリズを演じたジェシカ・ビールの演技も見応えがあった。
パラレルワールドが交錯するから、同じシチュエーションでまったくちがう演技が求められる。これは下手な俳優さんがやると白けてしまうからね。この3人をキャスティングした段階で、この映画は成功したと言えるかも。
突っ込みどころはあるけれど、クリスの能力が一気に覚醒したと思えば楽しめる。そしてもし未来が予知できるとしたら、おそらく『2分』ぐらいが妥当なんだろうな、と確信させてもらえる映画だった。
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