最も大切なものがわかる瞬間
誰かに大切にしているものを尋ねると、複数の答えが返ってくるだろう。仕事、お金、健康、家族、友人、趣味等、答える人によって順序はちがっても、おおむね似たようなものだと思う。
だけど『たった一つ』という条件で質問すれば、ほとんどの人が答えに窮するはず。それらは等しく大切であって、たったひとつを選ぶなんて困難に思えるから。だけどそんな難しい質問に答えることができる瞬間がある。
それは窮地に追い込まれたとき。進退きわまってどうしようもなく、たった一つしか選べない状況になって、人は自分が最も大切にしていたものがわかると思う。
そのことをテーマにした映画を観た。
『ファミリー・マン ある父の決断』2016年のアメリカ映画。日本では未公開とのこと。
なんと戦う男の代表のようなジェラルド・バトラーが、ビジネスマン、そして父親役として出演している。なかなかレアなので、彼のファンであるボクにとっては最高の映画だった。
ジェラルド・バトラー演じるデインは優秀なヘッドハンター。このまま成績を残せば、会社の役員待遇に昇進する。売り上げのためには手段を選ばない非道な男で、家族のことを省みることなくいつも深夜まで仕事をしていた。まぁ、よくあるパターンだよね。
だけどデインは妻を愛しているし、三人の子供のことを大切に思っている。それゆえ家族に楽な生活させようと必死で働いていた。だけど彼に想定外の不幸が襲いかかる。
長男のライアンが白血病になった。それもかなり深刻な状態。妻は病院につきっきりになるので、自宅には義母に来てもらうという緊急事態。ライアンを愛するデインは、仕事を進めつつも時間を見つけて息子の願いをかなえようと必死になっていた。
だけど営業の成績は落ちるし、妻ともギクシャクしてくる。そのうえ化学療法をあきらめて新しい治療法を試していたライアンが、昏睡状態となってしまう。彼を救うには両親の言葉を聞かせるのが最適だと医師に言われる。
そこでデインは、ライアンの病室に仕事を持ち込んで、そこから部下に命令を下していた。時間を見つけては、必死になってライアンに話しかけた。そしてその過程で、ライアンを世話している男性看護師からある話を耳にする。
ライアンが昏睡状態になる前、彼は父の仕事を誇りに思ってると話していた。それは困っている家族のパパを救う仕事だから。だけど実際のデインは、求職者を不幸にしてでも高額契約しか成立させてこなかった。
もしこのままライアンが死んでしまったら、息子の期待に背くことになる。デインにとって最も大切なものは、息子の信頼に答えることだった。そして彼はあることを決行する。素晴らしい職歴だけど50代という年齢のゆえ、再就職できないルーという男性がいた。
そのルーの契約をデインは成立させる。デインの会社の儲けがまったくないという条件で。そのことでデインはクビになるけれど、ライアンに自慢できる仕事ができたことに満足していた。そしてそれと同時に奇跡が起きる。昏睡状態だったライアンの意識が戻り、白血病に打ち勝った。
失業したデインは、自分でヘッドハンターの会社を始める。その最初の顧客になってくれたのが、工場の責任者となったルーだった、というオチ。
よくあるパターンの物語なんだけれど、デインと妻、そして3人の子供たちが本当に素敵。そして最後にデインを救ってくれたルーが、メチャいい人なんだよね。登場人物たちがとても温かいので、心の底から癒される作品だった。
ジェラルド・バトラーのパパぶりもよかったなぁ。リーアム・ニーソンに対抗して、これからは戦うパパを演じて欲しいとマジで思うほど最高の演技だった。
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