犯罪者の味方はヒーローだった
様々なタイプの映画を観ていると、自分の好みというのが少しはわかってくる。ボクが感情的に最高の気分になるのはミュージカル。これはまちがいない。
そして時間を忘れて見入ってしまう作品として、裁判ものなのは確実。ハリウッド映画では裁判をテーマにした作品は多い。そのすべてを観たわけじゃないけれど、ほとんどの作品が良作だと言ってもいいくらいに好きなジャンル。
そんな裁判ものの作品で、ボクのなかではトップ1に入れてもいいと思える映画に出会った。
『リンカーン弁護士』(原題:The Lincoln Lawyer)という2012年のアメリカ映画。主人公の弁護士を演じているのはマシュー・マコノヒーで、最初から最後まで彼がカッコよくてたまらない。シリーズ化してほしいと本気で思うほど、主人公のミックが最高のキャラだった。
ミックは犯罪者の味方を主にしている弁護士。切れ者で裁判では負け知らず。だけど弁護料は高額なので、法廷弁護人のような仕事はやらない。それでも犯罪者たちはお金をかき集めて、ミックに弁護を依頼しようとする。彼なら最悪でも減刑、うまくいけば無罪を勝ち取ってくれるから。
そんなミックに大金持ちの不動産業者から依頼が舞い込む。息子が女性への暴行で逮捕された。どうやら誰かにハメられたらしく、息子のルイスにとって不利な証拠ばかりが出ている。そこでミックは高額な弁護料を提示して、弁護を引き受けることになった。
ただし調査を進めていくと、どうもルイスが怪しい。本当は女性に暴行をしていて、別人をハメようとしているように感じられた。そしてミックは恐ろしいことに気がつく。
ある殺人事件の容疑者を弁護したことがある。あまりに証拠がそろっていたので、このままでは死刑になる。依頼者は無罪だと言い張っているけれど、彼を助ける証拠がない。そこで司法取引を持ちかけて、終身刑ということで命を助けたことがある。今回の事件がその手口に似ていた。
気になって調べると、その殺人事件の犯人がルイスだとわかった。そのことを追求すると、ルイスはあっさりと認めた。だけどすでに依頼人としての契約を結んでいる。だから依頼者との会話を証拠に採用することはできない。そんなことをすれば、守秘義務違反でミックは弁護士資格を剥奪される。
犯人だとわかっているルイスを弁護しなければいけない。そのうえ相棒として調査を依頼していた人物が、ルイスにとって不利な証拠を見つけた直後に殺されてしまう。おそらく犯人は保釈中のルイスだろう、とミックは確信する。
そんな追い詰められた状態で、ミックは裁判を続けていく。ここからが彼の本領発揮。そしてこの映画の素晴らしいところ。ここまで少しずつ提示されていた伏線が、ラスト近くで一気に回収されていく。
ミックを目の敵にしていた検事を裁判で打ち負かし、なんと暴行事件に関してルイスの不起訴を勝ち取る。これでルイスに対して弁護の義務を果たしたミックは、裁判所を出たミックが殺人罪で逮捕されるように裏で画策した。暴行罪は不起訴だけれど、ルイスは殺人罪で逮捕されるというオチ。
そのラストのどんでん返しに、それまでの登場人物が絶妙に関わってくる。別れた元妻が、検察官だというのも面白い設定。元妻と助け合いながら、本物のワルを追い詰めていく。犯罪者の味方であるミックは、実は悪を憎むヒーローだったとわかる。この映画はかなりオススメだよ〜!
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