偏見と防犯のせめぎあい
Twitterの140文字をAIが分析することで、その人の知能指数や精神疾患の有無までわかるようになってきた。先日のブログでも紹介したように、まだ初期段階とはいえ、実用化一歩手前まできているらしい。
そして同様のシステムを使って、防犯に応用することがすでに始まっている。ただ、なんとなくモヤモヤしたものを感じる。
犯罪の発生を事前に予測してパトロールする「予測的取り締まり」を警察が使い始めているとの指摘
トム・クルーズが主演した映画で『マイノリティ・レポート』という作品がある。AIが未来の犯罪を予知することで、犯行以前に犯人を逮捕するというSF映画。どうやらそれが現実になりつつある。
カナダの警察では、そうした予測システムを防犯に応用しているとのこと。カナダのトロント大学が中心になって研究されたシステムが、カナダ全土の警察で使用される予定らしい。今年の9月1日の段階で、導入の検討や試験的な運用が開始されていることが発表されている。
カナダは以前からITを応用したデータを防犯に利用しているそう。SNSの投稿から、失踪しそうな人を特定して対応をとるシステムがすでに導入されている。今後はそうした個人の投稿を、犯罪抑止に応用するのだろう。
バンクーバー警察ではGeoDASHというシステムを導入していて、空き巣が発生しそうな場所の予測が行われている。カルガリー警察ではアメリカ企業が開発したシステムを導入することで、犯罪の被害者や目撃者などが所有する家屋や自動車の位置などをリンクさせ、可視化しているとのこと。
ただし専門家からは問題が指摘されている。なぜなら映画の『マイノリティ・レポート』は未来の犯罪を予測するけれど、カナダ警察は過去の犯罪に基づくデータを使用していること。だから現状において更生している人まで、AIのチェック対象になってしまう。
あるいは前科のない人でも、AIが指摘するパターンに当て嵌まるだけで犯罪者予備軍としてマークされる可能性がある。行動の結果ではなく、見込みによって言われののない偏見や差別を受けるかもしれない。これは真剣に考えるべき問題だと思う。
犯罪は起きないほうがいいに決まっている。だから防犯は警察にとって重視するべきものだろう。だからといって監視社会に移行することで、差別や偏見を加速させる可能性もある。偏見と防犯の境界線をどこに置くかによって、社会に与える影響がかえってひどくなることも考えられる。
ましてやそういったシステムが悪用される恐れもあるし、頭のいい犯罪者はシステムの裏をかくことも考えるだろう。でもボクの感覚としては、カナダ警察のやり方が世界的な傾向になっていくと思う。ネットでの誹謗中傷に対する抑止力にもなるだろう。もはやそういう時代だということだね。
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