ブラック・コメディに込めた反戦
戦争が愚かな行為であることを、これまで数えきれないほどの映画が伝えてきた。その多くは悲惨な実態を描くことで、ストレートに戦争の恐怖を語っている。
だけどまったくちがった方法で反戦メッセージを発信している映画がある。その方法とはブラック・コメディ。
ボクはずっと笑いながらも、戦争がもたらす恐怖をリアルに感じていた。
『ロープ 戦場の生命線』(原題:A Perfect Day)という2015年のスペイン映画。
映画の舞台は1995年のバルカン半島のどこかwww この設定から笑ってしまう。でもいきなり死体が登場する。それは井戸に投げ込まれたかなりデブな男の死体だった。
ユーゴスラビア紛争の停戦直後で、国連軍を含めた多くのNGOが活動していた。この物語の登場人物たちは、衛生的な水を確保することを意図する国際援助活動家たち。この近くには井戸が3つしかなく、そのうち2つの周囲は地雷が仕掛けられている。
だから国連軍がそれらの井戸に近づかないように警告していた。ところがたった一つ近づける井戸に死体が放り込まれた。このままでは井戸の水を汚染してしまう。それで主人公たちがロープで遺体を引き上げようとするが、途中でロープが切れてしまう。
映画の冒頭からロープを探すことが始まる。そして最後までロープを見つけようとする物語。死体を引き上げるためのロープを見つける過程で、停戦したばかりのこの地域の実情がリアルに描かれる。戦闘シーンも残虐シーンも一切ない。ただひたすらロープを探すだけ。なのに強烈な反戦メッセージが伝わってくる。
元々死体を放り込んだのは、その地域の敵対勢力。さらに井戸を使えないようにして、高額で飲料水を販売するのが目的なので、ロープを売る気なんて最初からない。いくら札束を見せても断られる。
停戦直後とはいえ、まだ戦争は続いていた。そこらにいる少年でさえ銃を持っているし、主人公たちが救った少年の両親は、敵の迫害を恐れて自殺していた。少年はそのことを知らずに祖父に預けられていた。結果としてその少年の両親が自殺したロープを使うことになる。
でも道中は地雷だらけ。さらに民兵が勝手に道路を封鎖したり、捕虜を虐殺しようとしていた。主人公たちがロープを探し求めたことで、結果としてその捕虜たちは国連軍に救われる。とにかく笑わせながらも、言葉にできない緊張感に満たされている映画だった。
そしてようやくロープを使って死体を引き上げようとすると、今度は国連軍に妨害を受ける。停戦の合意によって、その井戸に関与することが禁じられた。せっかくロープが手に入ったのに、水の汚染を防ぐことができない。そんなことにも、戦争の理不尽さが描かれている。
とてもよくできた映画なので、かなりオススメな作品。主演したベニチオ・デル・トロとティム・ロビンスが渋くて最高だった。自動車で地雷を避けるシーンなんて笑いながらもドキドキした。
さてそのデブ男の遺体はどうなったか? この映画にはそのオチがラストシーンで明かされる。このエンディングにもクスッと笑わせられた。気になる人は、是非とも本編をどうぞ。こんなオチになるとは思わなかったwww
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