1人の天才を超えるチームパワー
フレディ・マーキュリーという天才がいた。クイーンというバンドを世界的なスターにした人物。だから彼がエイズで亡くなったとき、ボクはクイーンが終わったことを確信した。いまでも基本的にその見解は変わらない。
ただ、1人の天才を超えるものがある。それは複数の人間がチームとして機能したとき。ボクはクイーンのニューアルバムを聴いて、フレディという天才を超えたチームパワーを実感することができた。
『ライブ・アラウンド・ザ・ワールド』というクイーンのライブアルバム。今月の2日にリリースされたばかり。もちろんフレディはいない。ヴォーカルをとっているのはアダム・ランバートで、ボクはクイーンであってクイーンでないと思っていた。
だけどこのアルバムを通して聴いて、その考えがまちがっていることを知った。いやぁ、本当にすごい演奏だった。フレディの声はないけれど、これは完全にクイーンだった。それはギターのブライアンとドラムのロジャーが、このバントの音楽をこれまで支えてきたからだろう。
ボクの知っているクイーンじゃないけれど、21世紀のクイーンとしてボクは完全に受け入れた。この3人の団結力が創り出した、新しい音楽だと思う。
そしてそれと同じように、1人の天才をチームパワーが凌駕する映画を観た。それは料理の世界。
『二つ星の料理人』(原題: Burnt)という2015年のアメリカ映画。ブラッドリー・クーパーが主演している。
ブラッドリー・クーパー演じるアダムは天才料理人。パリのある店でミシュランの二つ星を獲得している。ところが天才ゆえに、他人がダメに思える。思うように動いてくれないと怒り狂う。そうしたストレスのせいか、酒とドラッグに溺れて料理界から身を引いてしまう。
ところがようやく酒を絶ったアダムは、ロンドンに現れて旧友のトニーが経営するホテルのレストランで働きたいと申し出る。目的はミシュランの三つ星を取ること。そしてそのために、かつての部下や、アダムがロンドンで目をつけた料理人をスカウトする。
その一人が写真に出ているエレーヌという女性シェフ。彼女の実力の高さを認めたアダムは、スーシェフとして自分の店に引き抜く。ところが酒の欲望は断ち切ったものの、以前のアダムはそのままだった。それゆえ従業員たちと対立し、思うように動かない部下に怒りをぶつける。
そしてついにミシュランの調査員がやってきた。そして部下に罵声を浴びせながらも、完璧だと思える料理を提供する。ところがパリでも部下だった人間に復讐される。なんと彼が作ったソースには大量の唐辛子が仕込まれていた。
すべてが水の泡となったアダムは自殺を考える。そんな彼を救ったのが旧友のトニーであり、スーシェフのエレーヌだった。アダムとエレーヌのラブストーリーでもあるけれど、ラストに勝利するのは生まれ変わったアダムとチームだった。
部下を信頼することを受容したアダムは、これまでになかった素晴らしい料理を調査員に提供する。それは1人の天才が作ったものではなく、チームパワーによって完成した料理だった。ラストシーンでうなずくトニーを見ていると、きっと三つ星が取れたのかもしれないなぁ。
ブラッドリー・クーパーはいつもながら素晴らしい。そして恋人のエレーヌを演じたシエナ・ミラーも強く心に残る演技だった。ボクのお気に入りはトニーを演じたダニエル・ブリュール。トニーはゲイで、アダムのことを愛していた。だけどその想いは届かない。それでもアダムのために全力を尽くす姿が素敵だった。
あっ、そうそう。医師役を演じたエマ・トンプソンを忘れてはいけない。彼女のアドバイスで変わっていこうとするアダムが素敵だった。とにかく料理のシーンが迫力満点なので、かなりオススメの映画。だけどお腹が空いていると観るのがつらいよ〜〜www
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