自分を知ることの苦悩
『自分探しの旅』という死語がある。ボクがまだ10代だったころ、自分探しの旅と称して世界を放浪する若い人がいたもの。いまから思えば、どことなくこっけいで笑えてくるよねwww
ただボクとしては、とても意味深い言葉だと思っている。人間がこの世に生まれてくる真の理由が、『自分探しの旅』だと思っているから。もちろんボクが言っている自分とは、『自我』ではなく本当の自分である『真我』のこと。
まぁそれを言い出すと、悟りや覚醒というスピリチュアルな話題になるのでやめておこう。でも言えるのは、本当の自分を探す旅は辛くてキツいとうこと。自分だと信じていた存在が崩壊することなしに、本当の自分とは出会えない。自我の崩壊ほど、苦悩を伴うものはないだろうと想像する。
精神世界の話ではないけれど、本当の自分を探し続けた男の物語がある。
『ジェイソン・ボーン』という2016年のアメリカ映画。マット・デイモンの代表作と言っていい『ボーン・シリーズ』の最新作にあたる。ボクはこのシリーズの大ファンなので、この作品を観たのは初めてじゃない。過去のブログにも感想を書いている。
久しぶりに最新作を見直してみて、ジェイソン・ボーンという主人公の苦悩を改めて感じた。このシリーズのくわしいストーリーは割愛するけれど、全作を通して語られているのはジェイソン・ボーンによる自分探しの旅。
ジェイソンはCIAの特殊プログラムによって育成された殺し屋。だけどある事件で重傷を負って記憶を失くした。第1作から3作まではその記憶を取り戻すという内容だった。CIAの幹部は極秘プログラムが暴かれることを恐れ、ジェイソンを殺そうとする。
その3作でジェイソンの本名までわかったことで、完結篇として終わるはずだった。だから第4作目にマット・デイモンは登場していない。だけど彼の復活を望む声があって、この作品が作られた。この最新作はジェイソンと父の真実が語られている。
アクション映画としては最高に面白い。今回の作品ではラスト近くにあるラスベガスでのカーアクションが圧巻だった。何度見ても時間を忘れて見入ってしまう。基本的にCGを使わないそうなので、すごい撮影だったろうと想像している。
たしかにアクションはすごいけれど、ジェイソンという人物は常に悲しみをたたえている。自分のことを知れば知るほど、苦痛に苛まれているように見えて切なくなる。第2作ではようやく理解しあえる恋人と暮らしていたのに、その恋人は巻き添えを食って命を落としてしまう。
だからジェイソン・ボーンが心からの笑顔を見せるシーンは希少。常に眉根を寄せて苦悩を抱えているように見える。でもジェイソンをいつも助けてくれるのはCIAの女性工作員。シリーズを通じてレギュラーだったのがニッキー。残念ながらこの作品の前半で殺されてしまうけれど。
第2作と3作ではパメラ・ランディという女性幹部の助けを得た。パメラの協力によって、ジェイソンは危機を脱しただけでなく、隠されていた闇のプロジェクトの暴露に成功する。
そして今回の第5作も、ヘザーという女性エージェントがジェイソンを助ける。ヘザーを演じたアリシア・ヴィキャンデルという女優さんの演技は、この人物を見事に表現していたと思う。いい俳優さんだよね。
しかしヘザーはこれまでの女性とはちがう。強い野心を持っていて、ジェイソンを味方につけて自分の出世に利用しようと考えていた。映画のラストまでそのことを見せない。事件がすべて解決したあとで、その野心をジェイソンによって暴かれてしまう。
結局ジェイソンは孤独だということ。自分探しの旅は終わったけれど、虚しさだけが残っているんだと思う。まぁ、これでこそジェイソン・ボーンなんだろうね。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする