この裁判はめちゃ興味深い
裁判というのは、刑事、民事を問わず、誰かの権利、あるいは利益が損なわれていないかを判断するもの。逆に言えばその訴訟に関して、裁判官は誰の利益を考慮しているかということでもある。
殺人事件等ではその相関は明白だけれど、民事訴訟等の場合はその点が曖昧になる。それゆえ裁判官が誰を見て判決を出すのか注目される。先日のニュースを見ていて、裁判官の判断がとても気になる裁判が目に止まった。
カートリッジ会社がキヤノン提訴 「仕様変更で販売妨害」 大阪地裁
インクジェットプリンターを使ったことのある人なら、リサイクルインクの存在を知っているだろう。プリンターメーカー以外の企業が、そのプリンターで使えるインクカートリッジを再生して安価で販売するもの。
もちろんメーカーは純正品を勧めているし、リサイクルカートリッジを使ったことによる故障は保証しないと明言している。これはメーカーの理屈として正当だろう。他の企業が製造しているものにまで責任を持てないからね。
ただメーカー側にも計算がある。ボクはここ20年くらいはキャノンのプリンターを使っている。最初に使った機種でも、そしてここ数年で買い換えた機種でも共通しているのが、インクの減りが早いこと。そしてそこそこカートリッジの価格が高いということ。
つまりプリンターメーカーの収益構造として、本体価格を大幅に安くすることで購入を促し、プリンターに付随するサプライ製品で利益を出そうというもの。これはどのメーカーも共通していることだと思う。
そこで消費者の味方が立ち上がった。それがリンク先の記事のようなリサイクルカートリッジを販売する会社。利用者がより安いインクを手にできるように、純正品より低価格で提供している。
だけどメーカーも黙っていない。自社の収益の中心を担っているインクカートリッジを他企業に販売されるのは困る。そこでリサイクル商品を使ったときはインクの残量が出ないような仕様にした。
ボクも一度だけリサイクルカートリッジを使ったことがある。だけど1度でやめた。安いのはいいけれど、たしかにインクの残量がわからない。それでも数年前は使えていた。だけどいまの仕様だと「インクなし」と表示されるので、おそらく使用することさえ不可能なんだろう。
そこでリサイクルカートリッジを作っている企業が、営業妨害だとしてキャノンを訴えたというもの。
この裁判は興味深いなぁ。裁判官がどこを向いているのかがわかる。大企業のキャノンにおもねるのなら、この会社の訴えを退けるだろう。だけど消費者の利益を考えたら、安い商品を選べる選択肢の必要性を認めるかもしれない。だとしたらキャノンは仕様の変更を迫られるだろう。
ボク個人の感想としては、キャノンの立場に共感している。自社が作ったものに関して、どのような仕様にしても勝手だと思う。リサイクルインクが粗悪だという評判もあるので、プリンター本体の保護のためにも動くだろう。もちろん最大の利益を生み出すインクを他社に渡すはずがない。
一方、リサイクルメーカーは他人のふんどしで相撲をとっているわけだから、文句があるなら自分のところで新しいプリンターを作ればいい。あるいはメーカーの下請になって、正当な純正カートリッジを作るという選択もあるだろう。
とにかく大阪地裁がどんな判決を出すのか楽しみ。ちなみにボクは、これからも純正のインクしか使わないけれどね。
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