憑依したのは幽霊じゃない
憑依という言葉を見ると、反射的に幽霊を思い出す。ボクは子供のとき、悪霊に憑依される物語を見るとマジで怖がっていた。代表的な漫画だと『うしろの百太郎』や『恐怖新聞』という、つのだじろうさんの作品。マジで怖い漫画だったよなぁ。
今日観た映画も主人公が憑依されるという作品。ところが憑依したのは幽霊じゃない!
ちょっとバタバタしていて、できるだけ時間の短い映画をチョイスした。だからまったく予備知識なしで観たけれど、これが最高に面白い作品だった!
『アップグレード』という2018年のアメリカ映画。日本での公開は去年の10月とのこと。出演しているのは知らない俳優さんばかり。だからかえって先入観なしに楽しめたかもしれない。エグいシーンがいくつかあるので年齢制限がかけられているけれど、SF好きの人は必見の作品だと思う。
舞台設定は未来の地球。といってもそれほど離れた未来じゃない。自動運転の車が普通に走っていたり、空飛ぶ車やドローンが飛び交っているような世界。コンピュータで全てが管理されている。
だけど主人公のグレイはそんな世界を嫌い、古いエンジンの自動車を修理して走らせることを仕事にしていた。一方彼の妻は最先端ののIT企業で働いている。ある日グレイは、修理した古い自動車をIT企業のCEOであるエロンに納車する。帰りは妻に乗せてもらうために、妻の車も一緒に来た。
その帰り道、妻の自動運転車にエラーが発生して事故が起きる。怪我を負いながら車の外に出たグレイと妻は、いきなり暴漢に襲われる。妻は射殺され、グレイは脊髄を撃たれて四肢が麻痺してしまう。
両手両足が動かせなくなったグレイにエロンが近づく。まだ実験中の高性能AIチップがあり、それを埋め込めば手足を動かせるようになるとのこと。そのAIチップはステムという。ステムのことを世間に内緒にして治験させてもらえるのなら、グレイの両手両足を動かせるようにしてくれるという条件だった。
本当は死にたいと思っていたグレイだけれど、もう一度手を動かして仕事をできるのならと、その申し出を承諾する。そして手術は成功して以前と変わらないように手足を動かせるようになった。他人の前では車椅子で手足が麻痺しているように装いながら、自宅では以前のような生活に戻った。
ところがある日、誰かが話しかけてくる。それは頭のなかで聞こえる声だった。その主はAIチップのステムだった。ステムは独立した人格を持っていて、他の電子機器を自由に操作することができる。それどころかステムに肉体を委ねると、グレイは特殊部隊の兵士顔負けの戦闘マシーンとなった。
感覚的には映画の『マトリックス』と『イーグルアイ』のいいところを集めたような感じ。とにかくステムに任せたグレイは無敵だった。そして妻を殺した犯人を見つけられない警察にうんざりして、自分で犯人探しをする。
ステムと二人三脚で捜査することで、妻を殺した犯人グループを一人ずつ殺していく。ところがグレイ夫妻が犯罪に巻き込まれたのは偶然ではなかった。それを計画したものがいて、完全に仕組まれた犯罪だったことがわかる。
ラストの20分足らずでその黒幕が明らかになる。これはさすがに予想外だった。そしてその黒幕は、完璧に当初の計画を成し遂げる。悲惨な結末だけれど、とにかく面白い。監督は『ソウ』シリーズのメガホンを取った人なので、残酷で悲惨なのはと仕方ないかなwww
グレイをはめて妻を殺した黒幕とは?
新しい映画なのでネタバレはやめておこう。気になる人はぜひとも本編を。95分の作品だけれど、面白くてあっという間に終わってしまうと感じるはず。久しぶりに刺激的で面白いSF映画を観たなぁ。
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