地球侵略まで400年は長い?
もし400年先に宇宙人に侵略されて人類が滅亡するとしたら、いまのボクたちは何をするべきなのか?
そのことについてあらゆる角度からアプローチしているSF小説がある。『三体』という3部作の小説で、ボクは第1部の『三体』を読んでその世界観の虜となった。ずっと続きが気になっていたけれど、ようやく第2部を読むことができた。
『三体II:黒暗森林』上巻 劉慈欣 著という小説。
小説でありながら科学書を読んでいると感じるほど。SF小説としてリアリティの高さが半端ない。攻めてくる宇宙人が『三体』と呼ばれている惑星の住人。3つの恒星があることで、彼らの惑星が絶滅の危機に瀕していた。
前作である『三体』において、ある天才女性科学者がこの文明にメッセージを送ってしまう。その中国人女性は、平和主義者の三体人からこれ以上メッセージを送らないように諭される。なぜなら太陽系の存在を知れば侵略することになるから。
だけどその女性は文化大革命によって人類に絶望していた。だからSOSのメッセージを送ってしまう。そのことによって三体人たちの侵略が開始された。ただし太陽系との距離があって、その時点からでも450年もかかる。そのあいだに地球人の科学が進化すれば、対等の戦いになってしまうかもしれない。
そのことを危惧した三体人は、智子という素粒子を太陽系へ飛ばした。その素粒子によって太陽系の素粒子が影響を受け、その分野の研究が完全に停止することになった。地球人類はいま以上の科学進化を期待できないまま、三体人の侵略に備えることとなった。これが前回までのあらすじ。
すでに三体人を呼び込んだ葉文潔という女性は亡くなっている。彼女が作った組織も事実上は崩壊していた。ただ水面下でその組織は動いていて、三体人の侵略を手助けしている。この組織の目的は、三体人を神として地球へ迎え入れることだった。
一方、宇宙軍が創設されて、きたる400年後の戦闘に向けて準備が進められている。ところが智子といのは厄介で、地球上のすべての素粒子に潜り込んでいる。だから隠し事ができない。たとえ内緒話であっても、計画を口にしただけでそれが三体人に伝わってしまう。
そこで考えられたのが面壁計画というもの。三体人は嘘がつけない。基本的にテレパシーで情報のやりとりをするので、欺瞞という概念がない。それを逆手にとって、本心を誰にも知られない能力を持つ人間を選び、彼らに400年後に備えて計画を立てさせることになった。
選ばれたのは4人。タイラーという元アメリカの国防長官。レイ・ディアスという前ベネズエラ大統領。ハインズという科学者。そしてこの第2部の主人公となる羅輯(らしゅう)という社会学者。
この羅輯は生前の葉文潔と会っていて、ある秘策を授けられている。それゆえ4人の面壁者のなかで、三体人を支援する組織に命を狙われているのは羅輯だけだった。二度の暗殺をどうにか彼は切り抜けている。三体人もこの4人のうち、彼だけを異常に恐れている。
上巻ではこの4人の計画が明らかになり、400年後に備えて準備が始められる。だけどタイラーは心の内を三体組織に暴かれて自殺してしまう。残った3人は果たして地球を救うことができるのか。多くの宇宙軍兵士は冬眠することで400年後の戦闘に備えている。
羅輯はある秘策を実行したあと、三体組織によるウイルス兵器によって命を失いそうになる。いまの医学では助けられないので、彼は未来へ向けて冬眠することになった。それが上巻までの物語。
いまは下巻を読んでいる。どのような展開になるのかまったく予想できない。それだけにワクワクしている。まだ第3部は翻訳されていないので、最終的な結末を知っている人は少ないだろう。とにかく400年という未来が長いのか短いのか、この物語を読んでいると混乱してくる。魅力的だけれど不思議な物語だよなぁ。
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