世界中にこんな人がいるはず
過去から現代におけるどんな時代にも、必ず表社会と裏社会がある。歴史的な事実としては表社会で活躍した人の名前が残るけれど、それを陰で支えていたり、背後で操っている裏社会の人の名が知られることはない。
ある映画を観て、そんな裏社会の人間の実態を垣間見ることができた。
『バリー・シール/アメリカをはめた男』(原題:American Made)という2017年のアメリカ映画。パイロットとしてCIAに協力したバリー・シールという実在の人物を描いた作品で、写真のトム・クルーズがバリーを演じている。
トム・クルーズに惹かれて観たけれど、かなり面白い作品だった。こんな人物が本当にいたと思うと、人生の不可思議さを感じる。
TWAのパイロットだったシールは、若くして機長となった優秀な人間。だけどその地位を利用することで、キューバから一級品の密輸行為を行っていた。そのことでCIAに目をつけられ、逮捕されるのではなく協力するように依頼される。
いまでいえば優秀なハッカーがサイバー犯罪の捜査に採用されるようなものだろう。ソ連と冷戦時代のアメリカにとって、中米で堂々と犯罪を犯しているシールような人間は貴重だったにちがいない。
反米組織や共産組織の写真撮影に成功したシールは、CIAの担当官から信頼を受ける。その結果パナマのノリエガの仲介役となったり、ニカラグアの親米反政府組織であるコントラに武器を供給する仕事も請け負う。
ところがシールはしたたか。そのルートを利用することで、麻薬カルテルの指示でコカインをアメリカに運ぶ仕事までやってしまう。CIAはそれを黙認するだけでなく、新たな土地や飛行機を提供してダミーの航空会社を作らせて、シールに裏活動を継続させた。
その過程が恐ろしいながらもコミカルに描かれていて、トム・クルーズにぴったりの役だったと思う。いつもと少しちがうトムを見ることができて、ボクのようなファンにすれば楽しい作品だろう。
最終的にシールは自分でも処理できないほどの大金を抱え込むことになる。そして情勢の変化とともにCIAに見切られて、DEAやFBIに逮捕される。ところが今度はホワイトハウスが動くことで、彼にある仕事を依頼する。それがシールの命を奪うことになった。
結果として麻薬カルテルを裏切ることになり、逃亡生活中に殺し屋に命を奪われてしまう。事実だから仕方ないけれど、フィクションならもっとちがったエンディングにできただろうね。
とにかくどんな才能であれ、他人より秀でていることは価値を生むということ。もう少しシールに自制心があれば、かなり有意義な人生になっただろうなと思う。おそらく世界中には、シールのように裏社会の仕事をしている人が大勢いるんだろうな。
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