優しさに触れるのは飽きない
神戸は緊急事態宣言が出ているせいもあるけれど、街を歩いているとなんとなく殺伐とした雰囲気を感じる。人出の数やスーパー店内の様子は以前と変わらない。でもどことなく緊張感のようなものが漂っている。
そういえばNHKのネットニュースで報道されていた。マスクをしていない人を見かけると、87%の人が気になると答えているそう。そういえばボクも外を歩いているとき、マスクをしてない人を見かけるとつい二度見している。やっぱり気にしているんだろう。
そんな心がギスギスしたときには、『優しさ』に触れるのが一番。そして『優しさ」というものは何度触れても飽きがこない。ボクはあるシリーズの小説を読むと、いつも心が優しさに満ちてポカポカと温かくなる。
2021年 読書#5
『おまけのこ」畠中恵 著という小説。妖怪が登場する時代小説で『しゃばけ』シリーズの第4弾となる短編集。このシリーズは2001年に最初の単行本が出版されてから、現在まで毎年続刊が出ている。つまりボクのようにハマっている人が多いということだろう。
主人公は一太郎という廻船問屋兼薬種問屋の若旦那。たった一人の跡取りなので、病弱な一太郎を両親は最大に甘やかしている。そのうえ一太郎の祖母は力のある妖怪なので、彼はその血も引いている。それゆえ祖母は、仁吉と佐助という人間に化けた妖怪に一太郎の面倒を見させている。
ちょっと外に出るだけで寝込んでしまう一太郎。ところが頭が良くて、あらゆる事件を解決してしまう。そして何より優しい。人間だけでなく妖怪に対してもとにかく優しい。ボクはこのシリーズを読むと、そんな一太郎の優しさに触れるたび、感動で涙が止まらなくなる。
そして第4弾まで読んでも、その『優しさ』に飽きることがない。むしろもっと触れたくなる。このシリーズのファンは愉快な妖怪たちの活躍を楽しむだけでなく、主人公の一太郎の優しさに触れたいんだと思う。今回は5つの短編が収録されていた。
『こわい』
『畳紙』
『動く影』
『ありんすこく』
『おまけのこ』
こうして短編を読みながら、登場人物たちの過去がわかってくる。今回は仁吉と佐助が来る前の、5歳の一太郎の活躍も書かれていた。そして今回は、一太郎の部屋に住み着いている妖怪たちも大活躍した。
例えば『屏風のぞき』という妖怪は、ある女性のトラウマを解放するために活躍する。もちろんその知恵を授けたのは一太郎。さらに今回の一太郎は、吉原の禿を救うというアクション映画のような活躍もしている。手助けしたのは白沢という妖怪の仁吉と、犬神という妖怪の佐助だけれどね。
そしてボクがめちゃ感動で泣いたのはタイトルにもなっている『おまけのこ』という物語。一太郎の店で効果な真珠が奪われるという事件が起きる。その事件を解決したのは一太郎だけれど、鳴家(やなり)という小鬼の妖怪がその事件の証人だった。一太郎の部屋には大勢の鳴家が住んでいる。
最終的に一匹の鳴家は、奪われそうになった真珠を確保して逃げる。だけど途中で迷子になり、知らない家で見知らぬ鳴家たちに紛れてしまう。悲しくて心細くなって泣き出した家鳴りの声を、なんと一太郎は聞き分けてくれた。数えきれないほどの鳴家がいるのに、一緒に暮らしている自分を見つけてくれた。
そのことに喜び、自分の帰る場所があることに鳴家は号泣する。その健気な姿を見ていて、ボクまでもらい泣きしてしまった。一太郎の優しさは、そんな小さな妖怪にまでしっかりと届いている。さて、第5弾はどんな素敵な物語が待っているのかなぁ。
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