夫婦のピュアな魂に癒された
昨日のブログで紹介した小説で、主人公の優しさに癒されたことを書いた。そして今日もある映画を観て、ボクは心底から癒された。
何かに必死になっていると、自分が疲れていることに気づかない。でも心を癒してくれる作品に出会い涙することで、自分の心が思っている以上に疲れていたことがわかる。それも実話だけに本気で心が震えた。
2021年 映画#10
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(原題:Maudie)という2016年のカナダ・アイルランド合作映画。実在したカナダの女性画家であるモード・ルイスの人生を描いた作品。今年になって10本目の映画鑑賞になるけれど、まちがいなく最高の映画だと断言できる。
モードは若年性関節リュウマチを患っているせいで、やや身体が不自由。生まれたのは1903年だから、身体障害者に対する差別も強かった。両親を亡くした後の実家には兄夫婦が住んでいて、モードは叔母の家に預けられていた。兄は障害を持つ妹の面倒を見られないから。
いつか実家に戻れると心待ちにしていたのに、事業に失敗した兄は実家を売ってしまう。戻る場所がなくなったモードは叔母の世話になるしかない。絵を描くのが好きで他人と関わらずにひっそりと生きてきたモードは、ついに自立する決心をする。
そのとき独り者だったエベレットという人物が家政婦を探していた。そのことを知ったモードはエベレットに雇ってくれるように申し入れる。実は募集の紙をモードが持ち去っていたので、家政婦の応募は彼女しかいない。それで小さな家で住み込みの家政婦の仕事を得る。
エベレットは魚の販売をメインの仕事にしている昔気質の偏屈男。女性蔑視も激しく、モードを人間扱いしない。だけど追い出されたら居場所のないモードは必死で耐える。身体が不自由ながらも家事をこなし、家を清潔に保つ。そして少しでも家をきれいにするため、壁や廃材に得意の絵を描くようになった。
エベレットは根っからの悪人じゃない。モードと同じように他人に馴染めず、孤独のなかで生きていた。だけどモードと暮らすうち、彼の内面にある愛が具現化してくる。やがてモードの絵がある人物を通じて評価されたことで、アメリカのテレビでも取り上げるような有名な画家となっていく。
そしてモードとエベレットは夫婦となる。山あり谷ありの二人だったけれど、この夫婦の愛の姿を観ているだけで癒される。そして二人の暮らす家が本当に小さくで可愛い。エンドロールの実写で本当の家が登場するけれど、まさにそのままの可愛さだった。
絵が売れて裕福になったのに、二人は質素な暮らしを続けている。障害者の妹を見捨てた兄がお金欲しさにやってきたとき、モードもそして夫のエベレットも兄を追い返した。この瞬間ボクは溜飲を下げてスッキリした気分になれた。
なぜなら兄は本当にひどいやつだったから。モードは過去に妊娠したことがある。正常に生まれた娘だったのに、障害者の妹には育てられないと勝手に判断して、兄はその子を金持ちの家族に売った。モードには障害者の子供で死産だったと嘘をついて。
障害のある妻と偏屈な夫だけれど、二人は添い遂げるという結末。エベレットを演じたイーサン・ホークは最高だった。彼の心が穏やかになっいくのと呼応して、部屋が少しずつ可愛い絵によって彩られていくのが楽しい。
そしてモードを演じたサリー・ホーキンスという女優さんは、マジで素晴らしい演技だった。さすがイギリスの女優さん。夫に乱暴に扱われても、彼を愛し、彼が自分を愛してくれることを信じていた。そして死ぬまでひたすら絵筆を握り続けた。こんな素敵な画家がカナダにいたなんて、ボクはまったく知らなかった。
今年最高の映画だったなぁ。まだ1月だけれどねwww
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。