見抜けなかった映像トリック
小説や映画にどんでん返しはつきもの。ときには想定外の仕掛けに感動することはあっても、どことなく予兆を感じている。
ところがそんな予兆がまったく感じられない状態で、最後の最後にいきなり強烈な大どんでん返しをぶっ込んできた映画を観た。
その理由を考え直していて気づいた。巧妙な映像トリックが仕掛けられていて、映画を観ている人を惑わす演出がなされていたから。
2021年 映画#14
『サード・パーソン』という2013年のイギリス・アメリカ・ドイツ・ベルギーの合作映画。この写真の3組の男女が織りなす群像劇、だと思っていた。ところがラストになってそれが思い込みだったことに気づかされる。
物語の舞台となっているのは、ニューヨーク、パリ、ローマの3つ。
リーアム・ニーソン演じるマイケルは落ち目の作家。処女作は賞賛されたものの、その後の作品に苦しんでいる。新作の原稿も編集者に断られて窮地に陥っていた。妻と別れたばかりのマイケルには、オリヴィア・ワイルド演じる作家志望のアンナという恋人がいる。
ミラ・クニス演じるジュリアは、息子を事故で死なせそうになったことで、夫に子供の親権を奪われる。それを事故だと証明しようと必死になるけれど、精神科医の待ち合わせに遅刻したりと空回りばかり。夫のリックを演じているのはジェームス・フランコ。
エイドリアン・ブロディ演じるスコットは、未発表のファッションデザインを不正に入手して売っている。ある日ローマのバーで、モニカという女性に一目惚れする。モニカはある事情があって8歳の娘を悪党に取られている。そのために金が必要で、スコットはモニカを助けようとする。このモニカを演じているのはモラン・アティアスという女優さん。
場面がコロコロ変わるので、完全にこの3組の群像劇だと思っていた。いつかどこかで、この3組の男女が交わるのだろう、と。実際、ホテルの客室係をしているジュリアが大切なメモをホテルの部屋で失くし、それを拾ったのがアンナだという接点はあった。
ボクが気になったのは、この3組のメインキャストの共通点。マイケルはプールの事故で息子を亡くしている。ジュリアは事故で息子を死なせてしまうところだった。スコットも過失で7歳の娘を亡くしている。実はこれが大どんでん返しの布石だった。
もしこの映画を観ようと思う人は、絶対にこの先を読まないこと。
さてネタバレするよ。
この物語は3つのドラマの群像劇に見える。ところが実際は4つある。つまり同じ人物が、2つのドラマを演じているということ。
その正体はマイケルことリーアム・ニーソン。4つ目のドラマの視点こそが第三者である『サード・パーソン』というタイトルの由来。
結論から言えば、この『サード・パーソン』であるマイケルの視点だけが真実。彼が妻と電話でやり取りしたり、編集者と会ったり、薄暗い部屋で新作の執筆に苦しんでいる姿だけが現実。
ということは残りの3つの物語は、マイケルの小説の物語だったというオチ。最大のトリックは『サード・パーソン」であるマイケルを、架空の物語にも登場させていること。それは元恋人のアンナが父親と近親相姦の関係だった事実を暴露したという、スキャンダラスな小説だったから。
だから子供を死なせたトラウマを抱えているのはマイケルだけ。彼の苦悩が、他の登場人物に投影されていたということ。だけどこの暴露的な小説によって、マイケルは再び出版する機会を得ることになる。
ラスト近くで3人の女性の姿が重なる編集を見た瞬間、ボクは唖然として固まってしまった。完全に見抜けなかったから。だけどあとから思い返すと、マイケルには2つのパターンがあった。セレブ感あふれるときと、普通の中年っぽい地味なとき。後者が本当のマイケルだったということ。
それからマイケルのいる場所が、パリなのかニューヨークなのか混乱するシーンもあった。これは監督や脚本家が『サード・パーソン』の存在をチラつかせている演出だろうと思う。おそらく2度目、3度目のほうがより楽しめる作品だと思う。
最大の見どころは女性陣たちが美人でセクシーなこと。男性はこうしたシーンによってもトリックにかけられているんだろうなぁwww
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