出演者目線になる映画
かなりすごい映画を観てしまった! 今年になって23本目の映画だけれど、まちがいなくNo.1の作品。
アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、そして撮影賞を受賞したのは当然かもしれない。そして観終わって感じたけれど、ノミネートされていた主演男優賞、助演男優賞、そして助演女優賞を取っていないのが信じらないほどの素晴らしい演技だった。
2021年 映画#23
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(原題:Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))2014年のアメリカ映画。
ストーリーは割合にシンプル。マイケル・キートン演じるリーガンは、過去に『バードマン』というヒーロー作品で売れた映画俳優。だけどその後は落ち目で映画の世界を去り、ブロードウェイの舞台で自分が演出、脚本、そして主演をする芝居に役者生命をかけていた。本当に『バッドマン』を演じていたマイケル・キートンと重なるのがいいよね。
その稽古風景からプレビュー公演、そして初日の舞台までを描いた作品。ストーリーはシンプルなんだけれど、この映画はただものじゃない。まずは撮影方法。見た目は2時間近くのすべてがワンカットで演出されている。
もちろん実際はちがう。観ている人が知覚できない手法を使ってワンカットのように見せているらしい。慣れてくるとドアのシーンなんかを使っていることがわかるけれど、パッと見た印象では2時間のすべてがワンカットで撮影されたように感じる。
それゆえこの映画を観始めると、途切れないシーンの連続効果によってその場にいる気持ちになってくる。自分が出演者の一人になったような気分になって、画面から目を離せなくなってくる。この映画の魔術にハマってしまった。
もうひとつはマイケル・キートン演じるリーガンの精神状態。リーガンは『バードマン』の幻影に取り憑かれている。それは過去の栄光であると同時に、重荷でもあったのだろう。だから彼の一部は『バードマン』であり、その能力を使えるように見える。
最初の登場シーンではいきなり空中浮揚しているし、その後は何度も念力を使う。ただこの超能力が本物なのか、それとも統合失調症を発症したリーガンの心象描写なのかどうかわからない。その答えがラストシーンに用意されている。あえて書かないので、気になる人は映画を観てほしい。
とにかくマイケル・キートンの凄まじい演技に感動しっぱなし。そして何度も大笑いさせられた。自分を見失ったリーガンが、初日の本番の自殺シーンで本物の銃を手にするシーンは鳥肌が立った。その結末には大笑いしたけれどwww
そして共演俳優役のエドワード・ノートンが最高。リーガンにボロクソ言われたエドワードが、「だったらライアン・ゴズリングを呼べよ!」と叫ぶシーンは本気で笑った。だって何度もライアンを共演しているエマ・ストーンも出演していたから。
そのエマ・ストーンはリーガンの娘役。ドラッグのジャンキーだった過去があるぶっ飛び娘。いつもとちがう役柄で、エマ・ストーンだと忘れるほどのハマり役だった。3人はこの映画でアカデミー賞を受賞して欲しかったなぁ。さらにナオミ・ワッツも忘れてはいけない。この作品に欠かせない役どころで、彼女の魅力が完璧に表現されていたと思う。
しばらく時間をおいて、必ず観ようと思う。おそらく観れば観るほど新しい発見のある作品だと思う。
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