服役の先払いに笑った
普通は犯罪を起こすと、裁判を受けて懲役等の量刑が決まる。原因と結果という因果関係から見れば、それは当たり前のこと。
ところがまったく正反対のことをやらかした人物の映画を観た。
2021年 映画#45
『フェイク・クライム』(原題: Henry’s Crime)という2011年のアメリカ映画。その変わった人物をキアヌ・リーブスが演じている。
キアヌ・リーブス演じるヘンリーは、人生に夢や目的を持てない人物。ただ仕事をして、毎日を漫然として生きている。妻のデビーは子供を望んでいるけれど、きみが欲しいならいいよ、というような自主性のなさ。
ある日、高校時代の悪友が現れて、野球のメンバーが足りないので試合に出てほしいと言われる。同じく抵抗しないヘンリーは、友人と一緒に家を出る。車の中にはユニフォームを着た男が数人。ところが悪友の目的は銀行強盗だった。
強盗は成功するけれど、車で待っていたヘンリーだけが逮捕されてしまう。だけど主犯者の名前は言わないし、自分が騙されていたことも訴えない。結局は懲役3年の実刑を受けて収監される。
刑務所で同室となったマックスは、刑務所大好き人間。もう何十年も刑務所で暮らしている。本当は仮釈放できるけれど、わざとトラブルを起こして出所しないようにしていた。そんなマックスに将来の夢を聞かれて、ヘンリーは何も答えられない。
マックスとの友情を築きつつ、ヘンリーは刑期を終えて出所する。そのあいだ妻には恋人ができて離婚していた。一人になったヘンリーは、街をうろつくあいだに、ようやく自分の夢を見つける。
それは銀行強盗だった! どうせ無実の罪で銀行強盗としての懲役刑を終えたんだから、本当に銀行強盗をしても問題がないはず、というのがヘンリーの発想。ようやく人生のテーマを見つけたヘンリーは、銀行の隣にある劇場に禁酒法時代の地下通路があるのを知り、それを使って強盗をする計画を練るという物語。
犯罪映画だけれど、実はラブストーリー作品だった。ヘンリーは偶然にジュリーという女優と知り合う。彼女は銀行の隣の劇場で芝居に出演することになっていた。ヘンリーはマックスを誘って出所させるだけでなく、ジェリーを巻き込んで強盗を成功させようとする。
最終的には、劇場へ出入りするためにヘンリーは俳優となる。これだけを聞くと白けそうだけれど、その流れは意外にも自然で違和感がなかった。最終的に銀行強盗は成功するし、ヘンリーとジェリーの恋も実る。もしかしたらヘンリーは、俳優としての道を進むかもしれないというラストだった。
あり得ないストーリーなんだけれど、キアヌ・リーブスの演技が自然なので突っ込みどころを感じなかった。さらにジェリーを演じたヴェラ・ファーミガのコミカルな演技が最高だった。シリアスな役が多い彼女なのに、こんなユニークなキャラを演じられることに感動した。
さらにマックスを演じたジェームズ・カーンの存在感が実にいい。ボクのなかでは『ゴッド・ファーザー』や『ミザリー』に出演していた若いころのイメージが残ったままだったけれど、こんな素敵なおじいちゃんになってとは。もう80歳だもんね。
なんとなく変なキャラたちが登場する映画だけれど、最後まで楽しめる素敵な作品だった。
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