香港から移住する人たち
ここ数日のミャンマー情勢を見ていると胸が痛くなる。昨日の報道だと、１日で100人以上の市民が軍によって殺されている。デモの鎮圧が目的だとはいえ、100人もの市民を殺すなんて完全に常軌を逸している。
アメリカのバイデン大統領は制裁措置としてミャンマーとの貿易を停止した。何もしない日本よりいいと思うけれど、貿易停止はミャンマー軍の背後に潜む中国政府の思う壺だと思う。ミャンマーが世界から孤立すればするほど、あの国は中国に頼るしかなくなるから。
そんな中国政府の動向は、東アジアにも異変をもたらしている。昨年に定められた香港国家安全法によって、多くの香港人が国外脱出を検討している。
『一国二制度』が崩壊して『一刻一制度』になった香港に絶望したことで、すでに大勢の人が外国へ移住している。過去の経緯によってイギリスに移住する人は多いけれど、台湾に移住する人もかなりの数になっているそう。
2019年に台湾に移住した香港人は5858人だったが、20年は倍増近い1万813人となっている。リンク先の記事は香港から台湾へ移住した人にインタビューしたもの。湿度の高い台北より、空気が乾燥した台中に移住する人が多いらしい。
台中のタクシー運転手さんによると、ここのところ乗客の多くが香港人になったそう。それほど移住者が多いのだろう。言葉も通じるので、移住先とし選ばれることが多いんだと思う。
このインタビューに答えていた30代男性の話が印象に残っている。ある日、台湾の警察に呼び止められた。香港にいたときは警察に怯えていた。だからその癖が抜けず、身分証を提示して反応を待つあいだにとてつもなく緊張したそう。
ところが香港からの移住者だとわかったとたん、警察官の態度が一気に変わった。「台湾に来たばかりで、大変でしょう。頑張ってくださいね！」と励ましの言葉を掛けてくれたそう。これだけでも台湾の人たちの移住者に対する気持ちがわかる。
ただ台湾政府は法律を変更して、香港からの移住に制限をかけた。その理由はボクが想像したとおり。
香港からの移住をよそおって、中国政府の工作員が潜入する可能性があるから。『一国二制度』を失った香港は、台湾にとって中国そのものだから。でもそんな映画のようなことがあるだろうか、と笑い飛ばす人がいるかもしれない。だけど中国政府は本当にこういうことをやる。そうすることで共産党の一党支配を守ってきたんだから。
こうなってくると、これから移住を考えている人は辛い。やはり欧州に逃げるのが最適なのかも。だけど家族や年老いた両親がいたりすれば、そう簡単に動くことは難しい。そう思って迷っているうちに、結果として移住そのものができなくなってしまうかもしれないしね。
難しい判断を迫られている人が多いんだろうな。いまや東アジアにおいて香港と台湾という存在が抱える問題は、北朝鮮よりも戦争の危険をはらんでいるように思う。ミャンマーのような出来事が起きないことを願うしかない。
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