シリーズ失速の引き金かな?
トム・クルーズが主演した『ジャック・リーチャー』シリーズの原作を追いかけている。ただずっと気になっていることがあった。
2020年の段階で25作品も続いているシリーズなのに、邦訳作品は11作しかない。初めて映画化された『アウトロー』という作品で全体の9作目になり、日本での邦訳作品としては5作目となる。つまり途中の4作が邦訳されていない。それは売れ行きが落ちたからだろう。
第1作の『キリング・フロアー』、そして第2作の『反撃』という作品を読んだときは、邦訳が飛び飛びになっている理由がわからなかった。だけど第3作の『警鐘』という作品を読んで、もしかしたらこの作品がシリーズ失策の引き金になったのかもと感じた。
その証拠として、このあとに邦訳されているのはシリーズ第8作にあたる『前夜』という作品だから。この『前夜』がバニー賞を受賞したことで、再び邦訳がスタートしたんだと思う。そしてこの次の『アウトロー』へと続くことになる。
2021年 読書#35
『警鐘』下巻 リー・チャイルド著という小説。上巻の感想については『今回のジャックは純愛?』という記事に書いているので参照を。
ジャックの軍隊時代の直属上官だったリオン・ガーバーが、自分のことを探していると知った。だがジャックを探していた探偵は、何者かによって殺害されてしまう。そこでジャックがリオンを尋ねると、彼の葬式が営まれていた。そしてジャックは一人娘のジョディと久しぶりに再会する。
さらに謎の殺し屋は、ジャックとジョディの命まで狙ってきた。どうやらリオンが入院中に依頼されていた、ある兵士の捜索が影響しているらしい。年老いたホビー夫妻は、息子のヴィクターがベトナム戦争中に捕虜なったと信じていた。それは行方不明者として遺体が見つかっていないから。
憲兵だったリオンが調査することで、あることをつかんだらしい。ただ自分の病気が思わしくないことを知って、信用できる元部下のリーチャーを探していた。それを知った誰かが、ジャックの命を狙っていた。ここまでが上巻の内容。
ちなみに元上司の娘であるジョディのことを、ジャックはずっと女性として気にしていた。それは彼女も同じで、本当は互いのことを思っていた。上巻ではジャックらしくない純愛だったけれど、下巻に入ってすぐに二人は深い関係になっている。やっぱり原作のジャックはそうでなくっちゃねwww
さて下巻を読んでの感想だけれど、最初の2作に比べて失速した感が否めない。結論からいえば、ホビー夫妻の息子に成り済ました人間がヴィクターの認識票を奪ってヴィクターとして暮らしていたというオチ。それも凶悪な犯罪者として。
元上司のリオンに代わって、その成りすましをジャックが暴いたというストーリー。本物のヴィクターはベトナム戦争中のヘリのパイロットとして、任務中に戦死していた。そのヘリに同乗していたのが、上官を殺した罪で護送中だった成りすまし男だった。
ただ今回のジャックはどことなく精彩がない。それまでの天才的な彼の姿が見えない。成りすましというストーリーもありきたりで、長い小説の割にはワクワク感が欠けていたと思う。もしこのジャックが第1作目だったら、この小説は25作も続くシリーズ化はされなかっただろうと思う。
ちょっと残念な物語だったなぁ。それだけに4作をあけて邦訳が復活した次の『前夜』という作品に期待している。映画化された『アウトロー』へと繋がる作品となるので、最初のころのジャックが戻ってくるんだと思う。それを楽しみにして、次のシリーズを読もうと思う。
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