DV夫からの逃亡を支えた絵画
ホラー小説における恐怖の対象は、幽霊や悪魔という異世界の存在がメイン。だけどもしかしたら、本当に恐ろしいのは生きている人間かもしれない。
スティーブン・キングがそんな人間の恐ろしさを描いている。もちろん彼の小説なので、異世界の存在も登場するけれどね。
2021年 読書#44
『ローズ・マダー』上巻 スティーブン・キング著という小説。やはり著者の小説は短編集よりも長編のほうがはるかに面白い。そして怖い。
主人公はローズという専業主婦。夫はノーマンという名で刑事をしている。物語の冒頭はノーマンのDVから始まる。刑事としては優秀で、かなりの手柄をあげている。だけどノーマンの本質は異常な癇癪持ち。ちょっとしたことで妻のローズに暴力をふるう。
ローズは何度も殺されるような暴力を受けながらも耐えていた。せっかく授かった子供も、夫の暴力によって流産している。そんなローズがある日、ふとしたことがきっかけで逃げようと思う。そして夫のキャッシュカードを奪い、ハンドバッグひとつで逃亡した。
住んでいた家から1300キロも離れた街にたどり着き、暴力から逃れてきた女性を保護する施設に助けられる。いつ夫に見つけられるかと怯えながらも、彼女を勇気づけてくれたのは、たまたま質屋で目にした絵画だった。
ノーマンからもらった婚約指輪と引き換えに、その絵を手に入れたローズ。そこに描かれた顔の見えない女性に勇気をもらうことで、ようやく小説の音読という天性の仕事を見つけて自立する。その質屋を経営しているビルとも恋愛関係になり、ようやくノーマンの恐怖から立ち直れるとことまで来た。
ところがノーマンは優秀な刑事。あらゆる手段を使うことで、ローズが暮らしている街を突き止めた。さらに彼女を保護施設に紹介した男性を問い詰めて、最終的に殺してしまう。ヒタヒタと近づいてくるノーマンの足音。ローズは怯え、再びノーマンの恐怖に飲み込まれてしまう。
そんなとき、不思議なことが起きる。彼女が部屋に飾っていた絵の世界に入り込んでしまう。そこでローズ・マダーという自分と同じ名前の女性に出会う。その女性の子供を助けたことで、ローズはある約束を取り付ける。
「わたしは報いる」という言葉を。
ここまでが上巻。ノーマンはすぐ近くまで来ている。おそらくもうすぐ彼女に接触するだろう。下巻ではローズに報いるといった『ローズ・マダー』が関係してくるはず。さて、どのような展開になっていくのか。相変わらず先の読めないスティーブン・キングの小説だなぁwww
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