SNS時代だからこその共感
いまやネット社会はSNS時代といっていい。ボクもこうしてブログを書きながら、自分のいいたいことを表現している。ましてや匿名や顔を隠せるTwitterのようなSNSだと、誹謗中傷まがいの自己主張が荒れ狂っている。
つまり誰もがいいたいことを発信できる時代になったということ。だから著名人たちも、週刊誌等の取材記事を自分の言葉で否定できるようになった。そんな誰もが自分の意見を表明する時代だからこそ、そうではない人を見ることでホッとすることがある。
いいたいことを口にできない。そんなウジウジした男性が主人公の映画に共感できたのは、いまがSNS時代だからかもしれない。
2021年 映画#90
『素敵なウソの恋まじない』(原題:Roald Dahl’s Esio Trot)という2015年のイギリス映画。高齢者の恋を描いたラブロマンス作品で、写真のジュディ・デンチとダスティン・ホフマンが共演している。
アメリカ人だったけれどイギリスに移住してアパートに一人で暮らすホッピー。ダスティン・ホフマン演じるホッピーが、どんな人生を歩んだ末にイギリスへたどり着いたのかわからない。そのことは映画でも触れないままだった。
ただ孤独なのはわかる。とても親切な男性で、エレベーターでのマナーだけで明らか。自分のやりたいことのためにコツコツと貯金しているような人物。そんなホッピーがシルバーという女性に一目惚れした。
シルバーは彼の下の階に引っ越してきた女性で、夫はすでに他界していて一人暮らし。このシルバーを演じているジュディ・デンチがマジで可愛い。写真のウサギ耳でもわかるように、こんな愛らしい彼女を見たのは初めてかも。『007』シリーズのM役とはまるで別人。
一人暮らしが寂しいシルバーは、なんと亀を飼うことにした。だけど悩みはその亀が大きくならないこと。そこでホッピーはあることを考える。彼女に亀が成長するという嘘の呪文を教えた。そしてその想いが現実となるように、100匹もの亀を購入する。つまりシルバーに知られないように、少しずつ大きな亀に交換していくことを実行する。
ただひとこと「好きだ」をいえばいいだけ。でもどうしてもその言葉が出てこない。そんな彼の想いが少し屈折して、亀の交換というあり得ない方法に至ってしまう。ホッピーはアホかいなと思いつつ、誰もが好き放題に自分の意見をいっているSNS時代の激しさを思うと、なぜか心が和んで応援したくなった。
結局は恋のライバルが現れ、その結果として亀の嘘もバレてしまう。失意のまま引っ越しを決意したホッピーに、シルバーがようやく本音を告げる。実は彼女もホッピーに一目惚れしていた。つまり両思いの二人だったのに、互いにうまく気持ちを伝えられない状態だったというオチ。
ということでハッピーエンドでホッとできる作品。ある意味ありえない物語なんだけれど、二人の演技についつい引き込まれてしまった。そして語り手のジェームズ・コーデンがこの二人の物語をさらに素敵なものにしてくれたように思う。心がポカポカになる映画だったなぁ
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