敵が見えない気持ち悪さ
ハードボイルドやアクション作品は、割と早々に主人公と敵対する相手が明確にされる。だからこそ主人公の立場になってドキドキしたり、応援したりできる。
ところが典型的なハードボイルド作品なんだけれど、上巻を読んでも敵が見えない状態で放置されてしまったwww
このなんともいえない気持ち悪さゆえ、いち早く下巻が読みたくて落ち着かない。つまり著者の術中にハマってしまったということらしい。
2021年 読書#65
『葬られた勲章』上巻 リー・チャイルド著という小説。トム・クルーズの主演で映画化された『ジャック・リーチャー』シリーズを追いかけている。この作品はシリーズの13作目になり、邦訳としては6冊目になる。全部邦訳されていないのがちょっと寂しい。
今回のジャックもある事件に偶然巻き込まれてしまう。舞台はニューヨーク。お気に入りのミュージシャンの演奏をライブハウスで楽しんだ帰り道、ジャックは深夜の地下鉄に乗っていた。そこである女性が目に止まる。彼の中東での軍隊経験からすると、自爆テロをする人物の要件にすべてあてはまる。
そこでジャックはその女性を説得しようと思い、少しずつ近づいて会話をする。そして警察だと嘘をついて事情を尋ねようとしたとき、その女性はバッグからいきなり銃を出した。そして自分の頭を撃ち抜いて自殺してしまった。
死んだ女性はスーザンといい、国防総省の事務員だった。なんらかの情報を誰かに伝えるため、ワシントンから出てきて深夜のニューヨークの地下鉄に乗っていた。どうやら大学生の息子を人質に取られている形跡もあり、切羽詰まった末に自殺したらしい。
ジャックの調査によって浮かび上がってきたのは、ジョン・サンソムという下院議員。上院議員への選挙活動中で、彼の過去を調べて誰かに伝えようとしたのが自殺したスーザンだった。
その情報を求めていたのはライラ・ホスというウクライナの女性。母親は若いころはソ連の赤軍将校で、夫もソ連軍の狙撃手だった。ソ連がアフガニスタンに侵攻した1983年、ライアの母と父は戦場にいた。そこで夫は敵兵に捕らえられ、拷問を受けたうえ惨殺されている。
ところがその手引きをしたのが、アメリカ兵だったらしい。その人物が当時はアメリカ陸軍の特殊部隊員だったジョン・サンソムだった。つまり母親の復讐のためにジョンの身元をライラは探っていた。
ところがジャックが調査すると、ジョンはその事実をあっさり認めた。だけどライラの父親を惨殺したのは彼ではない。どうもその言葉に嘘は見えない。さらに当時のアフガニスタンにアメリカ兵がいて、ソ連の兵士を殺したとなれば大問題になる。いまそれがバレても、ロシアを含めた第三次世界大戦の引き金になってしまう可能性があった。
ジャックとしてはジョンに同情した。軍人としてこの秘密を決して明かすことはできない。その証拠に、FBIの捜査官らしき人物がジャックに脅しをかけてくる。さらにライラの素性が怪しい。母親と名乗っている人物は事実を述べているらしい。だけどライラが彼女の娘だということにジャックを疑問を持った。
つまりこの段階としては、基本的に悪人がいない。そして誰もが怪しい。スーザンは自殺だし、ジョンの戦争中の任務は仕方ない。ジャックとしては目の前で自殺したスーザンの事情を知りたいけれど、誰が敵なのかまったく見えない状態。そんな気持ち悪さのまま上巻のラストに突入する。
そこでようやく殺人事件が起きる。ライラの依頼を受けて調査をしていて私立探偵のチームが皆殺しにされた。ジョンの仕業だとも考えられるし、状況によっては依頼したライラの可能性もあった。なぜならライラの正体は、恐ろしい人物だと告げる人物が現れたから。
ということで上巻はここで終わり。マジで気持ち悪い。いままで読んだ『ジャック・リーチャー』シリーズで、これほど先が読めない展開なのは初めてだった。これは下巻を読むしかないよね。図書館には予約してある本が届き次第、真の悪人の正体を見届けようと思う。
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