異次元世界は両刃の剣
体外離脱や明晰夢で体験する世界は、まったく危険なものじゃない。自分の脳内をのぞいているようなものだから、いつでも戻ることができるし、命に関わるような危険などあり得ない。怖い想いをするとしたら、それはその人が潜在意識に抱えている恐怖が具現化しただけ。
だけど物語の世界ではそうはいかない。異次元世界は癒しをもたらしてくれるけれど、同時に命を奪われるかもしれない両刃の剣ということになる。こんな世界観が得意な作家がいる。それはスティーブン・キング。
スティーブン・キングが書いた物語のなかで、もっとも難解だといわれてきた作品がある。その作品がドラマ化された。ドラマの脚本を書いたのは原作者のスティーブン・キング。つまり難解すぎて、彼にしか脚色できなかったということなのかもねwww
2021年 映画#105
『リーシーの物語』という2021年のドラマ。Appleテレビで今年の6月4日から配信がスタートして、2日前の金曜日に最終回を迎えた。毎週楽しみにしていたので、ボクとしては少し寂しく思っている。
もちろん原作は読了済み。たしかに難解な作品であるのは事実。だけどスティーブン・キングのファンなら余裕でこの世界に没入できる。彼の作品の多くにこの異世界が登場するから。『ダークタワー』シリーズや『スタンド』、『IT』、『ドクター・スリープ』、『シャイニング』、『呪われた町』もそうだし、それ以外の作品にもこの異世界が何度も出てくる。
だからこの世界観になじみがあるファンには、決して難解な作品じゃない。そしてさすがに著者自身が脚本を書いただけあって、ドラマの完成度はかなり高かった。原作に忠実で安心して最終回まで観ることができた。
リーシーはスコットという有名作家の妻。スコットの死後、彼の未発表作品を狙う狂信的なファンによってリーシーは命を狙われる。このストーカーとの戦いを描きながら、リーシーとスコットが関わってきた異世界の物語が展開していくという内容。
スコットは幼いころからからその異世界に出入りすることができた。そこには池があって、現実世界でどんな傷を負ってもその池に入れば一瞬で治ってしまう。ところがその世界には恐ろしい魔物がいた。スコットの兄はその魔物に取り憑かれたことで命を落としている。
スコットと結婚したばかりのリーシーは、そんな世界が存在することを信じられなかった。だけど何度かスコットに連れて行かれて、抵抗しつつも受け入れるしかなかった。スコットの死後にストーカーに襲われたことで、その異世界に再び入ることを決意する。
それは生前にスコットが計画していたとおりだった。彼は自分の死後にリーシーに危険が迫ることをわかっていて、綿密な計画を立てていた。そして物語の最後に、スコットが残した作品が異世界で見つかる。それが『リーシーの物語』というタイトルで、異世界にまつわるスコットの贖罪の物語でもあった。
と少しだけ紹介したけれど、原作を知らない人には意味不明だろうな。新作映画と同じ扱いなのでネタバレはできない。気になる人は是非ともドラマを観てほしい。リーシーを演じたジュリアン・ムーアはボクが抱いていた原作のイメージどおり。完璧な演技だったと思う。
そしてスコットを演じたクライブ・オーウェンも本当に素晴らしかった。ちなみにこのブログにアップした写真の場面は、初めてリーシーがスコットに連れられて異世界へ行ったときのもの。本気でこの物語を知りたい人は、先に原作を読むのがベストかもしれないなぁ
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