自分探しに苦しむ3人の女性
たまたまだろうけれど、今年になって中国名の登場人物が登場する小説をよく読んでいる。考えようによっては『特捜部Q』シリーズのデンマーク名よりは親しみやすいかも知れないけれどねwww
ただ中国の漢字と日本の漢字の読みが微妙にちがうので、慣れるまではかえって苦労する気がする。そんな中国名や中国表記の地名等でページが埋め尽くされている小説がある。だけどそんな読みづらさが苦痛にならないほど面白いから、このシリーズは大勢のファンを集めているんだろうと思う。
2021年 読書#71
『十二国記 風の万里 黎明の空』上巻 小野不由美 著という小説。中国をモデルとした架空世界を描いた『十二国記』シリーズ。ファンサイトの推薦順に読み進めている。まだまだスタートしたばかりだけれど、すっかりこの世界の大ファンになってしまった。
簡単にいえば、この世界は日本とはちがう次元にある。特別な人物、あるいは特別な出来事が起きたときだけ行き来できる。それゆえ完全な架空世界の物語ではなく、現在や過去の日本も関わってくる。
この世界の特徴だけ簡単に書いておこう。
十二の国がある。それぞれに国王、あるいは女王がいる。その国王を選ぶのは天意を受けた麒麟という動物。つまり正常な状態なら、12人の国王と12匹の麒麟がいる。ちなみに麒麟は人間の姿になって王を補佐する。
普通の人間が国王等になると永遠の命を得る。だけど殺された場合は例外。次の王が決まるまでは、その国は荒廃してしまう。子供や動物は母親から生まれず、木の実のようにして生まれる。とまぁ、少し書いただけで異質な世界なのがわかると思う。でもこれらの前提によって、物語が予測のつかない面白さとなっていく。
今回は、最初の物語の主人公だった女子高生の陽子が久しぶりに登場する。彼女は十二国で生まれるはずだったけれど、天災が起きたことで地球で生まれてしまった。普通の女子高生だった陽子が、やがて景王となる。その1年後がこの小説の始まり。今回は3人の女性が物語を牽引していく。
陽子は日本で生まれ育ったから、いきなり王になってもこの国の仕組みがわからない。そこで悩んだすえ一時的に宮殿を離れ民の一員としての暮らしを始める。そうすることでこの国のことを知ろうとした。
鈴は100年ほど前の日本人。あるとき時空の流れに巻き込まれて十二国の世界へやってくる。ホームシックになりながらもどうにか生きてきた。そして仙女となることで少女の姿のまま100年過ごす。ところが自分と同じ日本人の陽子が王になったことを知り、彼女なら自分を惨めな世界から救い出してくれるだろうと思い込む。そして陽子に会うために旅に出る。
祥瓊は先の峯王の娘だったが、民の不満を受けて両親は部下に殺される。祥瓊は身分を剥奪されて、農民の世界で暮らすことになった。ところが同じ年代の陽子が王についたことを知り嫉妬する。そして自分の不幸を呪いつつ、陽子を殺すために国を脱走する。
という3人の女性の旅が始まったばかり。展開としてはそれぞれが真の自分に気づいていく物語となっていく気配。下巻でこの3人が直接に関わってくことで、物語がクライマックスへと至るはず。続きが気になるので、下巻を読むのが楽しみで仕方ない。
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