出会いは必然という爽快感
この世で起きることに偶然はない、とボクは考えている。そのせいか小説というフィクションであっても、登場人物たちの出会いが自然で、かつ必然的であると感動してしまう。そう、そう、やっぱりすべては必然だった、と。
まさにそんな出会いが描かれた小説を読んだ。爽快感を伴う必然的な出会いに感動した。
2021年 読書#76
『十二国記 風の万里 黎明の空』下巻 小野不由美 著という小説。上巻についての感想は『自分探しに苦しむ3人の女性』という記事に書いているので参照を。
『十二国記』の物語をファンサイト推薦の順番に読み進めている。どの物語も面白いけれど、先に進めば進むほどこの世界の魅力に取り憑かれてしまう。これまで3つの物語を読了したけれど、この4つ目の物語が最高に面白かった。おそらく次にはその感想が更新されるだろうと期待している。
さて上巻では3人の同世代の女性が物語を別々に進めてきた。一人は陽子という慶国の国王。二人目は鈴という名の元仙女。そして3人目は祥瓊という別の国王の娘。この3人についての略歴は、上巻の感想に書いているので参照にしてもらえばと思う。
下巻ではようやくこの3人の女性が出会う。鈴は同じ日本の出身である陽子に会えば、自分のことを大切にしてくれるだろうと思い込んでいた。一方祥瓊は自分と同じ年齢の女性が王になっていることに嫉妬して、彼女を殺してしまおうと考えて近づいた。
ところが面白いことに、ある事件が起きたことで鈴と祥瓊は態度を変える。鈴は陽子を殺そうと思い、逆に祥瓊は陽子に興味を持つ。要するに3人の女性の成長物語であって、こうした心の動きがラストでは完璧に結実することになる。
最大の成長物語はやはり陽子。日本で女子高生だった彼女は、自分の国のことをあまりに知らない。それで住民に紛れて暮らすうち、ある幹部たちの腐敗と陰謀によって国民が苦しめられていることを知る。圧政に耐えかねた有志たちは、レジスタンスとして結集していた。
陽子が心の底から求めているのは信頼できる家臣。政治や経済、そして軍務における腹心を心から求めていた。この物語は陽子が国王でありながらレジスタンスに参加することで、ようやく信頼できる人物たちに出会えるという結末。
鈴と祥瓊と出会った陽子は、その縁で未来の国家を率いてくれる人物たちを王宮に迎え入れることができた。最終的には国王である陽子に招かれて、鈴と祥瓊も宮殿で学びながら国王を助けることになるというラスト。
簡単に書いたけれど、ここに至るまでの物語が本当によくできている。著者の頭のなかはどうなっているんだろう、と思うほど広大な世界観に圧倒されてしまう。そりゃこれはハマるよね。アニメになっているそうだけれど、それもうなずける。とにかく早く次の物語を読みたくてウズウズしている。
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