初恋が真の愛となる瞬間に感動
感動というのはいきなり来るもので、予測できないからいいんだろう。今日はそのことを実感した。
映画や小説の作品に触れるとき、できるだけ先入観にとらわれないよう冒険している。今日選んだ作品も、普段なら観ないだろうというもの。結果として、とてもいい冒険ができたと思う。
2021年 映画#126
『花のあと』2010年の日本映画。藤沢周平さんの原作ということで、物語としては期待していいだろうと思って観ることにした。まったく予備知識なしで。
冒頭に花見のシーンで始まるけれど、いきなり後悔してしまった。北川景子さんが主人公の以登という若い女性を演じている。申しわけないけれど、はっきりいって演技がいまいち。このまま観るかどうか迷っているうちに登場したのが、江口孫四郎という人物。
またまた申しわけないけれど、この孫四郎を演じた宮尾俊太郎さんの演技にガッカリ。調べてみると本職はバレエダンサーとのこと。この二人のやり取りで、ボクは再生ボタンを停止しようかと思った
ところが以登という女性のキャラが面白い。女性だけれど父親に鍛えられて、腕に覚えのある男性でも彼女に勝てないという剣士。それでまだ手合わせをしていなかった道場一の剣士である孫四郎と試合をする場面に見入ってしまった。
普通の演技だとイマイチの二人だったけれど、剣の試合のシーンは迫力があった。殺陣として素晴らしいできだった。それで続けて見ているうち、後半になってどんどん物語に引き込まれていった。國村隼さんや柄本明さんという名優の登場も、最後まで観ようと思った理由かもしれない。
だけどこの映画を一気に面白くしてくれたのは、以登の結婚相手で養子に入ることが決まっていた片桐才助という人物。この才助を演じた甲本雅裕さんがメチャメチャ良かった。彼の笑顔でこの映画の印象が急上昇することになったと思う。
以登は唯一自分に勝った孫四郎に惚れる。いわゆる初恋というやつ。ところが孫四郎は他の家に養子に入ることが決まっていて、以登の家とは家格がちがうので夫婦になることはできない。江戸時代はどうしようもないからね。
ところが結婚した孫四郎は陰謀に巻き込まれて腹を切ってしまう。その死に疑いを持った以登は許嫁の才助に頼んで、孫四郎の死の真相を調べてもらう。最終的に陰謀の首謀者がわかり、以登が孫四郎の復讐を遂げるという物語。
とにかく才助が最高。大飯食らいで、酒も大好き。孫四郎に比べたらブ男だし、以登にすればどうしてこんな男と結婚しなければいけないのか、と思い悩むほどの男だった。ところが実態はちがう。
才助はあらゆる手を尽くして、陰謀の本質を探り当てた。そして復讐を果たした以登の後始末もきちんとつけてくれた。実はめちゃデキる男だった。最終的には以登も才助という人間に好意を持つようになる。
ラスト近くにそんなシーンがあって、初恋の相手から真の愛へと変わる瞬間だった。ボクは感動して思わずウルウルしてしまった。この後の未来として、以登は才助との間に7人も子供をもうけ、才助はどんどん出世して筆頭家老にまでなる。やはり才覚のある人物だったんだね。
途中で辞めずに最後まで観てよかったなぁ。エンディングまで観ると、以登役は北川景子さんで良かったと思う。そう思わせてくれたのは、夫の才助を演じた甲本雅裕さんだけれどね。
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