現実離れに参加する楽しさ
フィクションというのは、現実に起きそうもないことを楽しむ娯楽。それは小説なら作家、映画なら脚本家、監督、そして俳優たちの努力によって、本当に起きたことだと思わせてもらえるから。
だけどフィクションの前提によっては、騙されてやろう、という気持ちが必要な場合もある。それは現実離れした世界に進んで参加するという楽しみ。
80代まで善良に生きてきた男性3人が、もし銀行強盗をするとしたら?
常識的なことにこだわる人や、フィクションのリアリティに厳格な人は、そんな設定なんてあり得ないと否定するだろう。だけどそれはもったいない。そんなあり得ない設定を受け入れることで、めちゃめちゃ楽しめる作品がある。
2021年 映画#132
『ジーサンズ はじめての強盗』(原題:Going in Style)という2017年のアメリカ映画。この作品の邦題をつけた人を怒鳴りつけたくなるほど、かなりひどいタイトル。だけど映画は最高に楽しくて、最初から最後まで笑い転げてしまった。
強盗をすることになった老人は写真の3人。モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、そしてアラン・アーキンという名優の3人。このキャストなら、どんな設定でも面白いと確信できる。そしてその期待どおりの内容だった。ただし、老人が銀行強盗するという設定の受容が必要だけれどね。
マイケル・ケイン演じるジョーは、年金が打ち切られて途方に暮れていた。離婚した娘と孫が一緒に暮らしているのに、このままではローンが払えずに家を奪われてしまう。それで銀行に相談に行っている最中、銀行強盗に遭遇する。強盗を思いつくのは、これがきっかけ。
ジョーはずっとある工場で働いていた。その職場仲間で定年後も親友として付き合っているのが、モーガン・フリーマン演じるウィリー、そしてアラン・アーキン演じるアルバート。3人が勤めていた会社は吸収合併されることになり、彼らの年金は完全停止されることになった。
それを助けたのが銀行だと知って、3人は銀行から自分たちの年金を取り戻すことを決意する。それぞれに事情があり、どうしても老後資金が必要だったから。ところが練習を兼ねてスーパーの万引きに挑戦するけれど、あっという間に店員に捕まってしまうwww
そこでプロを雇うことにした。実行は3人だけれど、徹底的に強盗のノウハウを仕込んでもらう。このあたりの過程がとても面白い。そして結果として彼らは強盗に成功する。もらえるはずだった年金分だけを確保すると、残りのお金は強盗の指南をしてくれた男性と、同じ工場で働いてきて年金を失った仲間たちに匿名で渡した。
だけどFBIは黙っていない。わずかな証拠を手にして3人を逮捕する。彼らが警察の追及に対してどのようなアリバイ工作をして、無事に切り抜けたのかを知りたい人はぜひとも本編を。これがとてもよくできてる。
さらに強盗を指南した男性の正体がラストにわかる。これがまたまた粋な設定だった。その伏線の張り方に感心した。もちろん強盗は犯罪。だけどこの3人を応援しつつ、最後まで最高に楽しめる作品。それは、現実離れした設定を受け入れた人だけが体験できる。こうした映画は、自ら参加しないと面白くないよ〜〜!
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