リアルな市街戦描写にガクブル
実話を基にした映画は数多い。それが心温まる物語ならいいけれど、戦争に関する作品だとシャレにならない。
実際に起きた戦闘に関する作品を観た。それがどれほどリアルであったかについては、主人公のモデルとなった退役軍人がロケ地を訪問したときの言葉が示している。その当時の戦闘を思い出し、足のすくむような思いをしたとのこと。
2021年 映画#152
『ブラックホーク・ダウン』(原題:Black Hawk Down)という2001年のアメリカ映画。製作総指揮がジェリー・ブラッカイマー、監督がリドリー・スコットというだけで期待できる作品。そしてまさに期待どおりだった。
出演陣もジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、オーランド・ブルーム、トム・ハーディという名優ぞろい。全員が素晴らしい演技だったけれど、この映画全体を貫いているのは市街戦の恐怖。これに尽きる。
映画の冒頭は明るい雰囲気だった。ところが危険フラグが立ちまくり。真昼間の戦闘に不安を訴える兵士がいる一方で、30分足らずで終わる作戦だから暗視装置なんて必要ないと楽天的な兵士もいる。そんな兵士たちの言葉のひとつひとつが、その後の恐怖を予兆させていた。
物語の舞台は1993年のソマリア。内戦によって30万人もの人が死んでいる。そこで国連軍やアメリカ軍が介入していた。特にアメリカが注目していたのはアイディード将軍が率いる組織。赤十字の食糧配給も彼らが全て奪い取り、国民を飢えさせている。内戦を主導している組織だった。
そこでアメリカ軍は単独で動く。アイディード将軍傘下の幹部が一堂に集まることがわかった。そこで幹部を逮捕することを計画。レンジャーやデルタフォースという100人の特殊部隊が秘密任務について首都のモガティスへ向かった。それゆえこの戦闘は『モガティスの戦闘』と呼ばれている。
当初は順調だった。幹部たちの逮捕もできて、複数の捕虜を輸送車に乗せた。ところが現地から離脱する直前、幹部の奪取を狙うゲリラ兵にブラックホークという戦闘ヘリが攻撃を受けた。そして市街地の真ん中に墜落してしまう。
この作戦の重要事項は、「仲間は決して見捨てない』というものだった。それゆえ負傷しているかもしれないヘリのパイロットを救うため、特殊部隊はヘリに向かう。それが地獄の始まりだった。
内戦の関与ということなので、攻撃されるまで米軍は発砲できない。そんなちょっとした躊躇がとてつもないカオスを生んだ。たちまち集まってきた1000人以上の民兵たちに特殊部隊のメンバーは取り囲まれる。そこからラストでレンジャー部隊が脱出するまでが描かれている。
この銃撃戦によってアメリカ兵は19人戦士。その一方でソマリアの市民や民兵の死者は200人を超え、アメリカの発表では1000名という死者数が報告されているらしい。30分足らずで終わるはずの作戦なのに、15時間にも及ぶ戦闘となった。
この戦闘がきっかけで、アメリカ軍はソマリアから撤退している。アメリカは戦争の当事国ではないのに、1000人もの市民を巻き越えにしたことが理由かもしれない。とにかくすごい映像の連続で、気の弱い人は正視できないと思う。ただ市街戦の怖さを伝えるのに、これ以上の作品はないと思う。そういう意味では、貴重な反戦映画だろう。
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