犬に愛されたいロボット
かなり珍しい構成の映画を観た。今月の5日に公開されたばかりの新作。
どう珍しいかといえば、2時間近くある作品なのに、顔を見せてセリフを話す俳優がたった一人という物語だった。
2021年 映画#163
『フィンチ』(原題:Finch)という2021年のアメリカ映画。2020年10月に公開される予定だったけれど、新型コロナの影響で延期が続いた。最終的にAppleが購入することになり、今月の5日にApple独占で世界配信されたばかりの作品。
物語の舞台は未来の地球。事情はわからないけれど、おそらく温暖化等の影響で人類のほとんどが滅亡している世界、トム・ハンクス演じるフィンチは才能のあるコンピュータ工学技術者だった。所属していた会社のラボでどうにか暮らしている。
材料と技術はあるので、フィンチは作業用のロボットを作っていた。デューイというな名の小さなロボット。ラボがあるのはアメリカのミズーリ州だと思うけれど、気温は摂氏60度ほどで紫外線が強烈。昼間の太陽に当たると、一瞬で焼けただれて命を失う。宇宙服を身につけなければ外を歩けない世界だった。
フィンチの同居人は犬のグッドイヤー。食料を探しているとき、ある母と娘に遭遇した。生き残りの人間は食料を求めて殺し合っている。その親子もいきなり現れた男に殺された。その少女のリュックにいたのが子犬だったクッドイヤー。そういう縁で、フィンチは彼と暮らすことになった。
だけど放射線の影響を受けてフィンチの命は残り少ない。そこで作ったのが写真の赤い顔をした二足歩行のロボット。名前はジェフ。フィンチがジェフに教えた最重要項目は、何があっても犬のグッドイヤーを守ること。
つまりフィンチは、自分の死後に犬の世話をしてくれるロボットを作った。やがて彼らのラボが居住不能となった。そこでフィンチはグッドイヤー、作業ロボットのデューイ、そしてジェフを連れて西海岸へと向かう。目標地点はゴールデン・ゲート・ブリッジ。
公開されたばかりの作品なので、ネタバレはここまでにしておこう。西海岸にたどり着くまでにさまざまな出来事がある。最大の問題は、犬のグッドイヤーがロボットのジェフを毛嫌いしていること。どうにかしてグッドイヤーの信頼を得ないと、フィンチが死んだあとにジェフは犬を守ることができない。
とにかくトム・ハンクス、犬、そしてロボットしか出てこない。ジェフ役の俳優さんがいるらしいけれど、映像ではわからない。もしかしたら声だけか、肉体の動きをCGに変換しているのかも。どちらにしても顔を見せて話す人間はトム・ハンクスだけという異色の映画。彼だからこそ完成した作品だと思う。
なんとかして犬の信頼を得ようとするジェフが健気で可愛い。そしてその結果として、感動のラストシーンが待っている。心がポカポカになる作品なので、これから寒くなる季節におすすめの映画だと思うよ。
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