背後に潜む深い魔の気配
連続しているドラマや映画、そして小説の続編に接するとき、ある種の言いしれない快感を覚える瞬間がある。それはその物語の世界に戻ってきたのを感じるとき。
優れた作品は世界観の完成度が高い。だから物語の世界に再突入するとき、抵抗なく流れるようにして意識が同化する。あぁ、戻ってきたという快感を覚えることで、再びその世界に没頭できる。そんな作品の続編を読了した。
2021年 読書#119
「十二国記 白銀の墟 玄の月」第二巻 小野不由美 著という小説。第一巻についての感想は、『ようやく最新刊に追いついた』という記事に書いているので参照を。
第一巻の記事でも書いたように、『十二国記』シリーズを知らない人にこの小説の内容を語るのは難しい。最初の作品が出版されたのが1991年だから、その流れを説明するだけでかなりの文字数が必要になる。ということで、このブログはボクの読書記録として書いている。
生きているはずなのに、行方が知れない元王の驍宗。女性将軍の李斎、そして王を指名して補佐する麒麟の泰麒は、第一巻で戴国に戻ってきた。ところが突然何かを感じた泰麒は、李斎と別行動を取ることを決意する。それゆえこの第二巻は二つの物語が同時進行していくという構成になっている。
王を探す李斎は仲間を少しずつ増やし、捜索の範囲をせばめていく。ところが怪しい情報ばかりで、王が監禁されている情報も、そして誰かに助けられて保護されている情報も得られない。ところが第二巻の最後で、それらしき武将がいる街までやってくる。
ところが李斎たち一行を、王を裏切った阿選の捜索だと勘違いした村人が、自分達の里を守るために傷が癒えた高貴な武将を薬殺してしまった。そして遺体を埋めたところで李斎たちは到着する。果たしてその武将は王だったのか? その直後、別行動を取っていた泰麒が、新しい王として裏切り者の阿選を指名したとして驚愕する場面で終わる。
だけどそれは泰麒の作戦だった。彼は角を切られたことで麒麟としての能力を失くしている。本来麒麟には彼を守る妖魔がついていて、もし彼に危害を加えようとしたらあっという間に殺されてしまう。泰麒は国民を助けるため、王宮に戻ることを決意した、そして偽王を本物だと指名することで、政治に参加して人々の生活を助けようとした。
もし本当に王として指名されたならば、その人物は麒麟を斬りつけても妖魔に襲われない。阿選は泰麒が麒麟の機能を失っているのを知らないので、自分が王に指名されたのか確かめるため泰麒の腕を刀で斬りつけた。そして彼の嘘を信じた。
大怪我をしつつどうにか王宮に戻った泰麒だけれど、どうも内部の様子がおかしい。王権を簒奪したはずの阿選は王宮の奥にこもって出てこない。まったく政治の実権を握ろうとしない。それゆえ国は大混乱に陥っていた。そして王の周囲にいる神官たちは、まるでゾンビのように生気を抜かれている。
第二巻では明らかにされていないけれど、背後に潜む深い魔の気配が物語全体に漂っている。それがどのようなものか、そして目的は分からない。だけど第三巻以降で明らかになってくるはず。とにかく気になって仕方ないので、早急に第三巻を手に入れなくては。
だけど第四巻がこの物語のラストで、その後の『十二国記』シリーズはまだ出版されていない。そう思うと早く読みたいような、もう少し置いておきたいような複雑な気分になっている。とりあえず第三巻に進もう。
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