歴史映画の難しさを痛感
小説や映画という娯楽は、フィクションであることが前提。つまり基本は嘘だということ。ただし丸わかりの嘘では誰も読まないし、観ない。そこに求められるのは、嘘が真実に思えるリアリティだろう。
だけど史実を扱った物語は簡単じゃない。歴史映画の場合、当然ながら実際の出来事がある。ドキュメントでない限りフィクションだから、史実に交えて嘘が散りばめられている。難しいのは、その混ぜ加減。
悲惨な出来事の場合、リアルに描くとエンタメとしての要素に欠ける。かといってあまりに事実からかけ離れてしまうとそっぽを向かれてしまう。ある映画を観たけれど、これは賛否が分かれるだろうなぁという感想だった。
2022年 映画#7
『忍びの国』という2017年の日本映画。写真の大野智さんが主演している。これは史実を基にして作られた作品。時代は戦国時代で、織田信長がまもなく日本を統一しようとしていたころ。
『天正伊賀の乱』と呼ばれていて、天正6年(1578年)から天正7年(1579年)を第一次、天正9年(1581年)を第二次として区別されている。この映画のメインは第一次で、第二次についてはエンディング前の短い時間で触れているだけ。
戦国時代オタクのボクにすれば、この時代の様子をおおよそ想像できる。本能寺の変が天正10年なので、織田信長にとって人生の終盤の時期とも言える。といってもここで登場するのは織田信長ではなく、次男の織田信雄。
歴史的にはバカ息子として知られていて、なんとなく実感している。急にスピリチュアル的な話になるけれど、ボクの過去生で織田信雄の軍に所属する足軽だったものがあるから。そのときの記憶として、足軽でさえ主君のアホさをぼやいていたほど。まあ、これは余談www
伊勢を納めていた北畠家の養子となった織田信雄。といっても当時の国主であった北畠具教を暗殺しているんだけどね。映画ではそのシーンも登場する。そして隣国である伊賀国を攻めることになった。父の信長は息子に自重するように注意していた。なぜなら伊賀国は『忍びの国』だから。
この映画では大野智さんが演じる無門という伊賀の忍者が主人公。彼の活躍によって第一次の戦いにおいて伊賀国は勝利する。信雄は信長から大目玉を食うことになり、石山本願寺攻めが落ち着いた信長の本軍が攻めてくる。それが第二次で、伊賀国の土豪たちは皆殺しにされてしまう。
これは史実だけ見れば悲惨な出来事。この時代の常とは言え、大勢の人間が信長によってなぶり殺しにされている。そこでこの作品としては、あまりに悲惨なリアリティを追いかけるより、エンタメ性を前面に打ち出したのだろう。
ややコメディタッチの構成になっていて、CG等も多用されている。ボク個人としてはその意図を感じたので、最後まで楽しめる作品だった。できることなら石原さとみさんが演じたお国には生きて欲しかったけれど。でも、彼女が死なないと第二次における無門の行動が説明できないからね。
忍びの人たち、つまり忍者たちをややディスった感はちょっと不満だった。金さえもらえばなんでもする、という態度には違和感を覚える。ボクの世代にとって伊賀の忍者といえば『仮面の忍者赤影』なんだから、もう少しリスペクトしてほしかったなぁ。
でもこれは映画。原作は和田竜さんなので、ぜひ原作を読んでみないと。彼の『村上海賊の娘』の大ファンのボクとしては、原作と映画はかなり雰囲気がちがうのではと感じている。ということで物語の感想については、原作を読んで紹介しようと思っている。
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