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高羽そらさんインタビュー

死を受容する心が切ない

主人公が死ぬという小説や映画はあまり好きじゃない。なぜなら主人公目線で物語に入っているので、死んでしまえば困難を乗り越えたというカタルシスを経験できないから。ただ『マディソン郡の橋』のように、故人を偲ぶ家族に明かされた手記という手法はいいと思う。とにかく普通に物語が進行して、ラストで主人公が死んでしまうという展開はちょっと苦手。

 

だけどそんな作品なのに、不思議な気持ちになる映画を観た。生きるという選択もあったのに、主人公を死なせている。そうせざるを得なかった気持ちに感情移入したとき、ただひたすら切ないものを感じてしまった。いい映画だったなぁ。

 

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2022年 映画#26

『ブラック・シー』(原題:Black Sea)という2014年のイギリス・アメリカ合作映画。主人公のロビンソンは、潜水艦に乗船していた元軍人。除隊後は海洋サルベージの専門家として11年も働いていた。ところが会社の業績の問題で、いきなり解雇されてしまう。

 

妻と子供がいたけれど、仕事に打ち込んでいてせいで離婚していた。妻はセレブの男と再婚して、息子はその男に養われている。自暴自棄で死にたい気分のとき、昔の軍人仲間がある仕事を持ちかけてきた。

 

1941年、ドイツとソ連は戦争中にもかかわらず融資が画策されていた。それでソ連から大量の金塊がドイツに運び込まれようとしていた。その金塊を積んだUボートが黒海深くに沈んでしまって行方がしれない。

 

その地域はロシアとグルジア(いまはジュージアかな?)の国境近くの緊張地帯。それゆえおおっぴらに探索することができない。そこで潜水艦の専門家であるロビンソンに声がかかった。ソ連の旧式の潜水艦を手に入れてくれるスポンサーが見つかり、金塊探しがスタートした。

 

ところがソ連の潜水艦なので、乗組員はイギリス人とロシア人の半分ずつ。想像されるのは両者のいさかい。スポンサーに4割を取られるけれど、残りは山分けだとロビンソンは宣言した。でもそれがかえって揉め事を増やすことになった。

 

要するに人数が減れば、分け前が増える。海の底という限定された世界で、乗組員同士の争いが勃発した。何人かが死んだ結果、潜水艦は航行不能になってしまう。助かるには金塊を積んだUボートを発見するしかない。なぜなら損傷したドライブシャフトを使えるから。

 

ということで残ったメンバーは協力してUボートを発見する。同時に大量の金塊も。どうにかドライブシャフトと金塊を積み込んで、さぁ帰ろうというときに事実が明かされてしまう。スポンサーは偽物で、ロビンソンをクビにした会社が黒幕だった。

 

このまま浮上しても、既に警備隊が待機していて逮捕されてしまう。そして金塊のすべてがその会社に奪われてしまうことがわかった。ここで再び紛争が起きる。逮捕されてもいいから生きたいというメンバーと、どうにか逃げ切って大金を手にしたいというメンバー。そして再び殺し合いが始まる。

 

結果として潜水艦は沈没するしかない。生き残ったのはたった3人。だけど脱出スーツは3着あった。なのにロビンソンは死ぬことを選択した。残りの二人を脱出させて、自分は潜水艦と運命を共にすることを決める。

 

そのラストシーンが切なかった。ロビンソンの脳裏に浮かぶのは、愛する妻と息子との思い出。だけど現実はセレブの男に家族を奪われてしまった。一生遊んで暮らせる金塊があれば、二人ともう一度暮らせると思っていた。だけど助かるとしても自分の命だけ。

 

あの絶望的な世界に戻りたくない、とロビンソンは思ったのだろう。それなら死んだ方がいいと。だから脱出することを拒んだ。その気持ちが痛いほど伝わってきた、本当に切ないラストだった。助かった二人が海上でもう一着の脱出スーツが浮いてくるのを見つける。

 

あっ、ロビンソンが脱出したんだ。そう思って近つくと、そのスーツには大量の金塊が入れてあったというラストシーン。生き残った二人のためにロビンソンが残したのだろう。ロビンソンを演じたジュード・ロウのワイルドで繊細な演技を堪能できる、とても素晴らしい作品だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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