他国に占領される恐怖
ロシアによるウクライナ侵攻に関して、これ以上死者を出さないためにウクライナは降伏するべき、というバカなコメントをテレビで話している人たちがいる。その人たちは太平洋戦争における日本の降伏を例に出す。でも世界の実例を見れば、日本人はたまたま運が良かったというだけ。
過去の歴史を見ると、ほとんどの国は他国に占領されると住民には悲惨な運命が待っている。男は虐殺され、女性はレイプされ、子供は奴隷として売り飛ばされる。それが現代でも起きていることは、中国の現状を見ればわかるはず。
だからウクライナの人たちは必死になって抵抗している。ロシアが過去に占領国に対してどうしてきたかを知っているから。なのに安全な日本の地から、降伏しろなんてことをよく言えると思う。それと同じく、勝つまで戦えという言葉も禁句。ボクたち日本人は戦争の是非について語る立場にない。
ある映画を観て、他国に占領される恐怖を改めて実感した。平和ボケをしている人は、この映画を観たほうがいい。
2022年 映画#42
『ガーンジー島の読書会の秘密』(原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society)という2018年のイギリス・フランス合作映画。最初に言っておくけれど、写真を見たらわかるように、この作品はハッピーエンドとなる素敵な恋愛映画。心がぽかぽかになる作品。
だけど舞台設定が第二次世界大戦から戦後なので、戦争中の出来事が強く心に訴えかけてくる。タイトルになっているガーンジー島は1940年7月から1945年5月までナチスドイツに占領されていた。場所はフランスに近いイギリス海峡にある島で、第二次世界大戦の開始からすぐに占領されてしまった。
島民はナチスから迫害を受け、ポーランド等から連れてこられた奴隷も働いていたらしい。夜の外出は禁止され、飼っていた家畜も接収された。それゆえこっそりとあるメンバーが集まって、隠していた豚を料理した。その帰り道でドイツ兵に見つかり、とっさに読書会を開いていたと嘘をついた。それがきっかけで本当の読書会グループができた。これがこの映画の前提。
主人公はジュリエットというロンドンで活躍する女性作家。ある日、彼女に手紙が届く。送り主はガーンジー島の読書会のメンバーであるドーシーという男性だった。ジュリエットが生活に困って本を売ったことがある。その本が読書会で使われていた。本に彼女の名前が書いてあったことで、本に関する質問が手紙には書かれていた。
読書会に興味を持ったジュリエットはガーンジー島に向かう。取材をしてタイム誌に記事を投稿するつもりだったけれど、知り合った読書会のメンバーから記事にすることを拒絶される。その理由は彼らにとってまだ戦争は終わっていなかったから。
その会の創立メンバーであるエリザベスという女性は、優しいドイツ兵と恋に落ちた。キットという名の娘もできた。だけどドイツ兵はその事実を知られて強制帰国させられ、その途中で魚雷の攻撃を受けて戦死する。さらにエリザベスは奴隷の子供を助けたことで国外追放となり、ドイツの収容所に連行されてしまった。
ジュリエットはキットの父親代わりであるドーシーから、エリザベスのことを聞く。そしてアメリカ人の婚約者に依頼することで、エリザベスの行方を探すことになった。結果としてエリザベスは収容所で射殺されていた。フィクションだけれど、きっと同じようなことがこの島ではあったんだと思う。
そんな経緯があって、ジュリエットはこの島に惹かれ、読書会のメンバーとの絆を深める。そしてドーシーを愛するようになり、婚約相手に別れを告げてこの島に戻ってくるというラスト。二人は結婚して、キットの両親として暮らす事になる。
ほのぼのとした素敵な作品で、本が持つパワーを感じさせてもらえる物語だった。ただその背景には他国に占領される恐ろしさがある。だからどうしてもいまのウクライナと重ねて見てしまう。1日でも早く、ウクライナの人たちが笑顔で暮らせるようになることを願うばかり。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。