やっぱ東野圭吾さんは天才
Twitterでもつぶやいたけれど、今日放送の『カムカムエブリバディ』はマジで泣いた。といっても録画していた今週の4日分をまとめて観たので、余計に感動したんだと思う。ようやく安子とるいの親子が再会できた。それも安子の孫のひなたの奮闘で。
とにかく細かい伏線が見事に回収されていて、ここまでやるか、とマジで驚いた。ひなたがNHKの英語講座の講師を依頼されたとき、担当の女性が両親に聞いた古い話を持ち出す。ひなたの母のるい、そして祖母の安子が大阪で暮らしているとき、一緒にラジオ講座を聞かせてもらったときの逸話。
もちろんひなたはその事実を知らないから、他人の美談として普通に聞いているけれど、最初からドラマを見ている人はどの場面なのかすぐにわかる。ここまで伏線を回収するという丁寧な物語作りに、感動しながらも勉強させてもらえた。いよいよ明日は最終回。来週からはしばらく寂しいだろうなぁ。
さて伏線の張り方と回収の素晴らしさを語るとき、絶対に名前を外せない作家がいる。それは東野圭吾さん。久しぶりに著者の本を読んで、やっぱり彼は天才だと思った。
2022年 読書#32
『クスノキの番人』東野圭吾 著という小説。東野さんといえば事件もの扱ったミステリー作家という印象が強い。たしかにそうなんだけれど、コメディも書かれるし、ファンタジー作品もある。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』というファンタジー作品は映画にもなったけれど、本当に素晴らしい物語。
この作品も強いていえばファンタジー作品になる。とにかく設定が完璧。それゆえに物語が限りなく広がっていく。比較的新しい作品なのでネタバレに注意するけれど、このタイトルの『クスノキ』については書いておこう。でないと物語の意味がわからないから。
主人公は直井玲斗という若者。玲斗は善人だけれど、自分を抑制できない。それで会社の上司に意見を通したりするので、仕事が続かない。生活に困って不当解雇された工場の商品を盗もうとして、警察に捕まってしまう。
刑務所行きも覚悟していたけれど、助けてくれたのは柳澤千舟という叔母。玲斗の母親はシングルマザーで彼を育てた。祖父と祖母は再婚で、祖父の最初の結婚で生まれたのが千舟だった。玲斗の母とは異母姉妹になるけれど、境遇はまったくちがう。
柳澤家はホテル業を営む大企業。つまり大金持ちだった。玲斗を助けた千舟は、ある仕事を依頼する。それがクスノキの番人。二人の関係や他の登場人物についてはネタバレになるので割愛しておく。
このクスノキには不思議な力があった。ここからネタバレ。
新月の夜にクスノキに入ることで、その人の念を預けることができる。それは『預念』と呼ばれている。最も多い使い道は遺言。
そして満月の夜になると、その念を受け取ることができる。それが『受念』と呼ばれている。受念には決まりがあって、三親等以内の血縁でないと受け取れない。つまり血のつながりのない人間には無理だということ。
この設定によって、ドラマが深くなる。血縁のあるなしの証明になることで、人間関係が赤裸々に浮き彫りにされていく。さらに念を預けるということは、その人の善悪を含めたすべてを残すことになる。だからやましいことがある人は、預念することはできない。
堂々と念を預けることができるのは、死を覚悟した遺言としてか、自分の人生に悔いがないということ。これまたドラマの題材になる。これらの設定が複雑に絡むことで、この物語は進行していく。
究極的には玲斗が千舟の後継者として成長していく物語。だけどクスノキに念を託す人にもドラマがあるので、この作品はシリーズ化できると思う。番人として様々な人の人生に関わることで、玲斗を通じた新しい物語が展開していきそうな気がする。続編が読みないなぁ。
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