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高羽そらさんインタビュー

ホラーの主役が見えない

ホラー映画や小説の主人公として思い浮かぶのは?

 

わかりやすい例として有名な『リング』で考えてみよう。原作では浅川和行という新聞記者の男性、映画では女性に変わるけれど浅川玲子というテレビディレクターを主人公だと答える人が多いはず。たしかに彼、または彼女の目線で物語が進行する。主人公と判断するだけの材料は十分だと思う。

 

普通の物語ならそれでいい。だけどホラー映画の場合は、ちょっと事情がちがってくる。語り手が主人公ではなく、幽霊、あるいは怪物が真の主人公になる。『リング』で言えば、当然ながら貞子が主人公だということ。

 

なぜ貞子が恐ろしい幽霊となり、ビデオテープを通じて呪いをかけたのか。物語のメインはそこで、浅川という人物は幽霊に代わって貞子の事実を暴露していくのが役割になってくる。ホラー映画に必要なのは、幽霊に関する因果関係を描くということ。

 

あるホラー映画を観た。設定はとても良くて、期待できる作品だった。最終的な結末もそこそこだし、それなりに楽しむことができた。ところが肝心なことが抜け落ちている。主人公が見えない。この映画の主人公であるはずの幽霊が、見えないという意味での『ゴースト』になっている残念な作品だった。

 

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2022年 映画#54

『ダーク・スクール』(原題:Down a Dark Hall)という2018年のスペイン・アメリカの合作映画。最初に書いたように、設定はなかなかいい。主人公のキットは9歳ときの父を事故で亡くし、母と義父と暮らしていた。

 

素行不良の高校生で、放火事件等を起こして退学になった。そして更生目的で編入を進められたのが森の奥の寄宿学校。集まったのは5人の同じ境遇を持つ女性たち。それぞれに問題を抱えていて、普通の高校を放り出されている。

 

社会的に落ちこぼれでしかない彼女たちに対して、校長は選抜された才能のある生徒だと言い切る。その理由はやがてわかる。この5人には強い霊感があった。いわゆる霊媒体質で、幽霊に憑依されやすい。

 

校長の目的は、この寄宿学校に巣食っている幽霊たちを生徒に憑依させること。その幽霊たちは音楽、文学、数学、絵画等の才能があるのに、短命で命を落とした人たち。やりきれなかった仕事を完成させるため、落ちこぼれの彼女たちを集めたというのが真実。

 

最終的にキットがその陰謀に気づき、友人たちを助けてこの学校から逃げ出そうとする。校長は必死になってそれを阻止するし、幽霊たちも妨害してくる。最終的にはキットともう一人の友人を残して、全員が死んでしまうというエンディング。

 

絶体絶命というところでキットを助けたのが、亡くなった父というオチもある。これは映画の冒頭で予想できたので、あまり感動の涙は流れなかった。それでも設定自体は面白いので、とても残念な映画だと思う。

 

というのは幽霊たちが主人公になっていないから。音楽家や数学者だったことはわかる。だけど物語に食い込んでくるほどの存在感がない。芸術や文学を完成させたいという校長の気持ちは多少はわかるけれど、生徒の命を犠牲にしてやるだけの動機が見えない。それは主人公であるはずの幽霊が語られていないからだと思う。

 

いい設定だったから、ちょっと残念な作品だった。ただ校長を演じたユア・サーマンはハマり役だった。ちょっとクセのある彼女の雰囲気が、校長の怪しさにピッタリだったと思う。ちなみに見どころは、やけに強い寮母のオバサン。笑っちゃうほど強いので、この女性の過去が気になったなぁ。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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