ちょっと怖い、暴力団裏話
ボクが暮らしている神戸市灘区には、日本中でよく知られている組織の本部がある。それは山口組。
自宅を出てプラプラと散歩ついでに歩くと、30分もかからない高級住宅地にその本部がある。邸宅の全体を覆うように防犯カメラが設置されていて、まるで要塞のような雰囲気。実際にその筋の人を見かけたことはないけれど、近所に住んでいる人ならそうもいかないだろう。
何か事件があって警察の捜査が入るとき、その本部に出入りする姿が報道される。よく見かけるのは暴力団の構成員たちと言い争うようにして入っていく人たち。暴力団担当刑事たちなんだけれど、正直言ってどちらが警察なのか区別がつかないほどwww
だけどある本を読んで、刑事たちがそうであることの理由がわかったような気がする。
2022年 読書#42
『マル暴 警視庁暴力団担当刑事』櫻井裕一 著という本。著者の櫻井さんは、ノンキャリから警視まで出世された叩き上げの刑事。刑事生活のほとんどの担当は暴力団で、いわゆるマル暴と呼ばれている組織。
この本は著者が刑事となってから退官されるまでの過程や、実際の事件についての体験談が記されている。それだけに内容は本物で、とても興味深く読んだ。そして相手が相手だけに、本当に大変で怖い仕事であることを知った。
暴力団関係の犯罪については、以前の警視庁では刑事部の捜査四課で対応していた。だけど2003年に組織犯罪対策部が設置されて、一課から五課まであるうち、暴力団捜査は四課が対応することになったとのこと。これがマル暴と呼ばれていて、暴力団の人たちには「四課」で通じるらしい。
この本は警察小説や漫画を書く人には必読本だと思う。警察組織の内情や現在の暴力団の事情がとてもくわしく書かれているから。普通の人にとっては未知の世界なので、ボクはページを繰る手を止めらないほどだった。
もっともドラマティックだったのは、関東暴力団の住吉会と稲川会の抗争。住吉会で葬儀があったとき、稲川会の人間が潜入して発砲事件を起こした。葬儀で攻撃するのは掟破りのことらしい。当然ながら住吉会は復讐を考える。
ところが住吉会系の組長が狙撃された。どうにか一命を取り留めたけれど、今度は病院のICUにいるところを撃たれて殺されてしまった。普通の人なら犯人は稲川会の構成員だと考えるはず。ところが逮捕されたのは住吉会の人間だった。なんと稲川会に復讐をしようとして失敗したことで、口を割らないように仲間に殺されたということらしい。まるで映画のような展開だった。
それ以外にも実際の事件の裏話が網羅されていて、読み物としても本当に興味深かった。ちょっと怖かったのは『闇落ち』という章。これは警察官が暴力団の手先になってしまうというもの。情報を得るために暴力団の構成員と接触する。ところが向こうはいろいろと誘いをかけてくる。
つまり「ミイラ取りがミイラになる」というやつ。気がついたら暴力団にガサ入れの情報を流していたりする。櫻井さんはそういう刑事を見てきたそう。捜査に役立てようという前向きな気持ちが動機なのに、あの手この手で籠絡させられることがあるらしい。
ちょっとだけ面白かったのは、関東と関西の暴力団のちがい。関東の暴力団を取り調べるするときは、どことなく緊張感の漂う張り詰めた雰囲気らしい。ところが最近になって関東へ進出してきた山口組の構成員はちょっとちがう。
よくしゃべるし、笑わせるような話の展開になることが多いらしい。やっぱそいういうところは関西人なんだね。ただ性格的な気質として関西風の要素があるだけで、山口組の構成員たちは関東の暴力団たちがかなり恐れているとのこと。残虐性でいえば関西のほうが強いらしい。兵庫県警は大変だ。
もうひとつ驚いたのは、外国マフィアに関するもの。日本人の感覚で言えば、中国マフィアや韓国マフィアが恐ろしいと思っていた。たしかに恐ろしいんだけれど、もっと強烈な外国マフィアがいる。それはなんとベトナムマフィアとのこと。
彼らは青龍刀のような刃物を常に携帯していて、仲間内や敵相手の騒動になると相手を殺すことが前提になっているらしい。ユニクロ等から万引きしてベトナムで売り捌く窃盗団のような連中。だから日本の暴力団とトラブルになることはないけれど、とにかく恐ろしい集団とのこと。
いろんな意味で勉強になった本だった。そして警察の人たちの大変な努力に頭の下がる思いになった。
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