巧妙なトリックに脱帽
ここ数日真夏のような暑さで、今日の午前中もまぶしい太陽の光が降り注いでいた。でも天気は下り坂で、今夜には雨が降るらしい。こうしてブログを書きながら大阪湾を見ていると、海を灰色に変えている厚い雲が目立ってきた。
そんな景色を見ていると、どことなく重い気持ちになりがち。でもいまのボクにはそんな雰囲気をぶっ飛ばす味方がある。それは1ヶ月ほど前にリリースされたリゾの新曲で、7月に出るニューアルバムの収録曲。道を歩いていてもすぐにその曲が頭に浮かび、つい歌い出したり、踊り出したくなるwww
『About Damn Time』というタイトルで、日本語にすれば、「そろそろ頃合いよ」というような意味。リゾといえばはち切れそうな肥満体がトレードマークのラッパーであり歌手。ボクはリゾの映像を見ていると、いつも漫才師の海原ともこさんを思い出してしまうwww
梅雨が近づいているこの時期に、湿り気を吹っ飛ばすご機嫌な曲をリンクしておこう。映像もメチャ面白いので、楽しんでもらえるはず。。
さて、ある小説を読んで、久しぶりに「やられた!」と悔しい想いをした。エピローグになって想定外のトリックが隠されていたことがわかり、小説の構成という部分でとても勉強になった。
2022年 読書#55
『自転しながら公転する』山本文緒 著という小説。直木賞作家の山本さんなんだけれど、彼女は昨年の10月に58歳という若さで他界されている。昨年の早くに図書館で予約していたけれど、作品を読了するのが没後になるとは思わなかった。
ストーリーは都という30代の女性と、桃枝という都の母親の視点で展開する。桃枝は更年期障害がひどく、東京で働いていた都は仕事を辞めて茨城の実家に戻ってくる。といってもいろいろと行き詰まっていて、母親の更年期障害は渡りに船だった。
この二人の視点で三人称の文章が書かれているけれど、基本的には都の恋愛問題。貫一という元不良の男性と知り合う。中卒で仕事が続かない貫一なんだけれど、なかなかいいやつ。都も惹かれて結婚したいと思うけれど、定職もない男との結婚を親が許さない。
ということで都の恋愛にまつわる物語と並行して、桃枝の更年期障害との戦いや、都の職場の人間関係が描かれている。ボク個人としてはあまり感情移入できない登場人物たちなんだけれど、続きが気になってついついページをめくっていた。
というのはプロローグは一人称で書かれていて、『私』がベトナム人と結婚式を挙げるシーンで始まる。ベトナムには母もやってきて、ウェディングドレスを着ている場面が続く。だからなぜ『私』がベトナム人と結婚することになったのか気になっていた。
本編に入って貫一との恋愛中、都はニャンという名のベトナム人と知り合う。お金持ちの息子で、とてもいい男。都に一目惚れして、貫一という恋人がいても気にせずにデートに誘ってくる。物語の終盤では貫一との決定的な別れの出来事があって、都はニャンと再会する。
ということでこの二人がどのような経緯で結婚するのか気になった。ところが本編のラストでは、貫一への気持ちを振りきれない都が、彼の職場に会いに行くシーンとなる。寿司職人の貫一に寿司を握ってもらい、やはりこの人しかいないと都は思う。そしてエピローグへ。
エピローグでは『私』の結婚式の続き。おいおい、ニャンとの恋愛物語はすっ飛ばすの? そう思った直後、ボクはトリックにかけられていることに気づいた。
プロローグとエピローグの『私』は、なんと都の娘だった。だからこの場面での母は桃枝ではなく都だった! そしてパーティー会場で『私』の父である貫一が寿司を握っていた。そう、都と貫一の二人は結ばれていた、という結末だった。
本編での都と貫一はトラブルばかりで、ニャンという存在が見え隠れする。プロローグの結婚場面のせいで都がニャンと結婚すると思い込んでいるから、そのつもりでストーリーを追いかけていた。だからエピローグでガツンとやられたことで、この物語の素晴らしさを痛感させられた。とても素敵な小説だったなぁ。
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