こんな悲しい『街歩き』は初めて
ボクは『世界ふれあい街歩き』というNHKの番組の大ファン。コロナ禍で新作が減ったけれど、それでも再放送を含めて毎週欠かさず録画して観ている。観光地だけでなく小さな路地でさえ歩く番組で、その国の人たちの生活を身近に感じられる。ちなみにこの番組のスピンオフである『岩合光昭の世界ネコ歩き』も大好き。
さてその『世界ふれあい街歩き』で、今月13日の深夜にある国の再放送があった。2019年に放送されたもので、もちろん当時に観ている。もしかして再放送されるかもと思っていた。そしてやはりそうなった。
その国とはウクライナのキーウ。放送当時はキエフと呼ばれていたウクライナの首都。録画した再放送を昨日の夜に観た。
いつも楽しみにしていて、笑顔で見終わる番組。なのにこの再放送は、涙を抑えるのに必死だった。悲しくて、切なくて、胸が詰まりそうに苦しかった。NHKのスタッフが訪問した2019年は、2014年にロシアによって強行されたクリミア併合が、ウクライナの人たちの心に深い傷を残していた時期。
なのにそのたった3年後には、首都のキーウがロシアの蛮行によってミサイル攻撃を受けている。2014年のことを思いつつも、街の人たちには笑顔があふれていた。子どもたちは無邪気に駆け回り、恋人たちは幸せそうに腕を組んで歩いている。なのに、いまのキーウはプーチンによってすべてが変えられてしまった。
これは番組の一場面。このモニュメントは、ロシアとウクライナの友好を記念して作られたそう。ところが右上に『亀裂』が入っているの見えるだろうか?
2014年のロシアによるクリミア併合に怒ったウクライナの人が、この『亀裂』模様を付け加えたらしい。この写真を見るだけでも、ロシアの圧力に対するウクライナの人たちの怒りを感じることができる。
この家族の写真の左にあるのは、2014年の紛争で亡くなった人の写真。この男性も、銃を手にしてロシアと戦ったらしい。そして親友を亡くしている。この番組の取材から3年後のいま、この子供たちは無事に過ごしているのだろうか? もしかしたら父親は再び戦地に立っているのでは?
もう一つ印象的な場面があった。
子供たちにピザ作りを教えている男性がわかるだろうか? この人は2014年の紛争で前線に行ったことでPTSDとなった。そんな心の傷を癒すため、子供たちにピザ作りを教えつつ、自分の癒しのためにここで働いている。この店の従業員はすべて帰還兵とのこと。
番組のラストで、この男性について紹介されていた。やはり再び戦地に向かったとのこと。こんなに幸せそうな笑顔で子供たちと接していたのに……。
もう一人印象に残っているのは、公園でウクライナの民族楽器を演奏していた男性。もう50歳を過ぎておられる。民族楽器を大勢の人に聞かせることを生きがいとされていた。同じく番組のラストでは、この男性も楽器を銃に持ち替えたとのこと。50代だというのに、前線に行くための訓練を受けている。
もし見逃していた人がいるなら、まだ見逃し配信がされているのでこの再放送を観てほしい。戦争が普通に暮らす人の日常を奪ってしまうことを、痛切に感じさせられる。たった3年で日常なんてぶっ飛んでしまうということ。
ボクが今朝のブログで書いたように、東アジアでもいつ有事が発生するかわからない。中国は台湾の主権を犯すことを意図しているし、北朝鮮は核兵器の開発に邁進している。そしてウクライナを侵略しているロシアは、日本とも国境を接している。ウクライナの出来事は、決して他人事じゃない。
とても悲しかったけれど、再放送を観て良かったと思う。2019年にナレーションを担当されたイッセー尾形さんが、今回の特別番組でも出演されている。再放送の前と後にイッセーさんが語られた言葉が、いまでも心に強く刻まれている。
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