戦争のきっかけは制御不能
どれだけ仲の良い人間同士であっても、たった一言の不注意な言動によって関係が崩れてしまうことがある。それでも根底に信頼関係があればすぐに仲直りできる。だけど積もり積もった不信が蓄積している場合、ほんの小さな出来事が取り返しのつかない事態に至ってしまう。
これは人間関係だけではなく、国家間についても同様だと思う。意識の奥深くまで浸透している不信感は、密室に可燃性ガスが充満しているのと同じ。小さな火花によって、壊滅的な破壊を招いてしまう。
今まさにそんな状況にあるのが中国と台湾。短いBBC の解説記事だけれど、言い知れない緊張感を覚える内容だった。
中国は台湾を自国領土だと言い張り、台湾は主権国家だと主張している。ただ決定的な事態を招かないよう、台湾政府としては独立宣言を公には発していない。現状の微妙な関係のまま、中国と相対していこうという世論が大勢とのこと。
だけど習近平は悪魔のような毛沢東を信奉していて、武力による台湾の侵略(言い分は統一だけれど)をほのめかしている。そしてそれを証明するかのように、台湾領空に戦闘機を飛ばすという挑発行為をくり返している。
そんな事態を受けて、アメリカのバイデン大統領が先月の23日に警告を発した。中国は「危険をもてあそんでいる」と述べ、もし台湾が攻撃されたら、アメリカ軍事的に保護すると明言した。
そうなると中国も黙っていない。今月の12日に中国の国防相が、アメリカが台湾の独立を支持していると非難した。そして、「次のことを明確にしておく。もし誰かが台湾を中国から分離させようとすれば、私たちはためらわず戦う。どんな犠牲を払っても、最後の最後まで戦い抜く。これが中国の唯一の選択だ」と話した。
リンク先の記事は、この両国のやり取りが、台湾をめぐる戦争へと向かっているのかを検証したもの。結論からすれば、どちらも戦争を望んでいないとの内容。中国は台湾を平和的統一することを優先しているし、アメリカも莫大な軍事費用が必要となるアジアでの戦争を避けたい。言葉の言い合いはあっても、いまのところ本気で戦争をするつもりはないらしい。
中国としてはウクライナ情勢を見ているのは確実。プーチンの陰謀を世界が容認するならば、自分たちも同じ行為に及ぶことを本気で検討するだろう。だから台湾有事を阻止するためにも、ロシアの侵略を世界は徹底的に阻止しなくてはいけない。
ただ最初に書いたように、戦争のきっかけは些細なことで暴発する。戦争をしないようにコントロールすることができても、戦争へと至るきっかけを制御するのは無理だと思う。なぜならほとんどの戦争のきっかけは、予測のつかないことだから。
中国が台湾に対して挑発をくり返していたら、何らかのミスで人命に関わる事故が発生するかもしれない。犠牲になったのが一人だとしても、兵士を失った国は黙っていない。それが全面的な戦争に至る可能性は高い。なぜなら両国の関係は引火性の高いガスに満たされているから。
別の記事だけれど、台湾の立方院長(国会議長)が今月の12日に注目すべき発言をしている。これまでは黙っていたけれど、度重なる中国の挑発に我慢ならなくなったらしい。「われわれには北京を射程圏に収める雲峰ミサイルがある。中国が台湾を侵略する前によく考えてほしい」と話した。
2002年からその事実を知っていたが、当時は言えなかったそう。そして現在ではそのミサイルを量産しているとのこと。さらにこう述べている。
「ウクライナで起きている戦争は台湾人に多くのことを教えてくれた。侵略者と勇敢に戦うウクライナ人を見習いたい」
この発言だけでも、中国と台湾の緊張関係が破裂寸前だとわかる。日本ではまもなく参議院選挙が実施される。この機会に、本気で台湾有事に対する党の方針を各政党は見せて欲しい。これからの東アジアを考えた場合、絶対に避けてはいけない課題だと思う。
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