全体主義が絶対にやること
過去の歴史において、権力者たちが素知らぬ顔でやっていたことがある。それは事実を改竄すること。
権力者にとって都合の悪い事実を消し去り、でっちあげの屁理屈を重ねることですべての行動を正当化しようとする。これは外国だけでなく過去の日本でも行われていたことで、人類が有する悪癖なのかもしれない。
現代でもそうした傾向が顕著なのは、全体主義と言っていい強圧的な権力を有する国家。北朝鮮は言うまでもなく、最近ではロシアのプーチンも、ウクライナに対する過去の事実を捻じ曲げようとしている。
そしてもうひとつ忘れてはいけない国がある。それは中国。
歴史を改竄する最大の目的は、若い世代を洗脳すること。その出来事を実際に経験している人を洗脳するのは難しい。だけど何も知らない若い世代には、操作した事実を真実として押しつけることが可能。
日本の教科書もかなり問題が多いけれど、それは中国でも同じ。リンク先の記事は、香港で使われる新しい教科書に「香港はイギリスの植民地ではなかった」という記述が入る予定らしい。中国政府の承認待ちの状態らしく、おそらくそのまま教科書として印刷されるだろうとのこと。
この教科書では「植民地」と「植民地支配」の定義をメインにしている。「植民地」と呼べるのは、その領土の主権と統治権を有していること。この教科書によると香港の主権は中国にあり、イギリスは香港を「植民地支配」しただけだという理屈らしい。
真っ向から否定したわけではなく、「植民地」の定義を提示することで事実を巧妙に歪曲させている。19世紀のアヘン戦争によって、一時的に香港を接収されただけという主張なのだろう。だから主権はずっと中国にあった、と若い世代を洗脳するのが目的だと思う。
気の毒だけれど1997年に中国へ返還された時点で、香港の運命は決まっていた。じわじわと法律改正を重ね、2019年の民主化運動も力づくて封じられた。残念ながらいまの香港は以前の香港ではない。教科書で事実が改竄されるのは避けられないだろう。
そしてこの教科書は別の問題に対する布石でもある。ボクはそう感じた。
それは台湾。日本に統治された時代はあったけれど、台湾の主権はずっと中国にあったと言いたい。香港の理屈を台湾にも当てはめることで、主権国家としての台湾を否定するつもりだろう。だから何があっても台湾の独立など認めないということ。
全体主義の恐ろしさを実感したい人は、『1984年』というジョージ・オーウェルの小説を読むといい。久しぶりに読み返したので、近いうちに感想を書こうと思っている。
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