リアル『北条殿の13人』は大所帯
昨年から今年にかけて、ボクはすっかり源平の時代に没入している。昨年の後半になって、吉川英治さんの『新・平家物語』を毎朝1章ずつ読み始めた。かなり久しぶりの再読。とにかく膨大な分量の小説なので、今年の後半に入っても全体の29%という段階。
まだ平清盛は生きているけれど、嫡子の平重盛はまもなく病死するというところ。源頼朝の挙兵まで3年もあって、歌舞伎で有名な俊寛が後白河法皇たちと平家滅亡の密儀をやらかしたところ。まだまだこれからが面白い。
そして今年になってアニメの平家物語を見たのをきっかけに、現代語訳の『平家物語』を読了した。そして追い打ちをかけるように、今年の大河ドラマである『鎌倉殿の13人』にハマってしまって、すっかりこの時代オタクになってしまった。
こうなったらとことんハマろう。そう思って平家を主人公にした『平家物語』ではなく、坂東武者視線で書かれた『吾妻鏡』に初挑戦することにした。
2022年 読書#64
『現代語訳 吾妻鏡1 頼朝の挙兵』五味文彦・本郷和人 編という本。『吾妻鏡』は鎌倉幕府によって編纂された歴史書。著者は明らかではないが、鎌倉幕府の中枢人物たちだと考えられている。いくつか写本があって完璧なものではないが、徳川家康も愛読していたとのこと。
漢文で書かれた日記風の文章で、そのままでは凡人に判読不能。だからといって、この現代語訳が小説のように書かれているわけじゃない。あくまでも研究者向きに記された書籍なので、注釈も多くてとっつきにくいのは事実。ある程度の予備知識がなければ、読み通すのを断念するかもしれない。
全部で16冊もあるので、まだまだ先は長い。この1冊目は源頼朝が挙兵した1180年4月から1182年までの出来事が書かれている。ボクのような歴史オタクには想像力を掻き立てられる本で、ワクワクしながらあっという間に読み終えてしまった。もちろん脳裏に浮かぶ面々は、ドラマの登場人物たちだけれどwww
ボクが思わず笑ったのは平家打倒の挙兵直前に集まった坂東武者たちに対して、頼朝が声をかける場面。ドラマの頼朝である大泉洋さんは、到着した武将に会うたび、「誰にも言っていないが、わたしはあなただけを信頼して待っていた」という八方美人的なセリフを言う。
これは大泉洋さんのキャラを使った、三谷幸喜さんの演出的な脚本だと思っていた。ところがどっこい、リアル頼朝も同じことをやっていた! つまりドラマ上の演出ではなく事実だったということ。
もちろん『吾妻鏡』のすべてが事実であるとは考えていない。歴史書というのは権力者のプロパガンダとして編纂されるもの。それゆえ虚飾が混ざっていることは多分に考えられる。だとしてもドラマがこれほど史実どおりに描かれているとは思わなかった。
この本のラストは、頼朝が浮気している亀の前の存在に気づいた北条政子が、家来に命じて亀の前が住む家を破壊するという場面。もちろんボクがイメージしたのは小池栄子さんが演じる政子。ドラマでは前半部分の平和な時代のエピソードだった。
政子をそそのかしたのは、父である北条時政の後妻である義母の牧の方。ドラマではりくという名で宮沢りえさんが演じている。この事件で頼朝に腹を立てた時政が鎌倉を出て伊豆に戻ってしまう。焦った頼朝はドラマの主人公である北条義時には鎌倉を離れないように依頼する場面がある。
小栗旬さん演じる義時と頼朝の信頼関係を象徴した素敵な場面。実はこの場面も『吾妻鏡』に書かれてあった。時政の出奔に驚いた頼朝が、すぐに義時の居場所を確認して、鎌倉に残ってくれるように頼んでいる。まさかこんなシーンまでリアルだとは思わなかった。
『吾妻鏡』を読んで驚いたのは、数え切れないほどの坂東武者たちが関わっていたこと。当然ながらドラマでは限られた人数しか出せない。そして『平家物語』は坂東武者についてそこまで詳しく記されていない。
とにかく大世帯だったことに驚いた。武将の名前が事細かに記されているだけでも、『吾妻鏡』は貴重な史料だと思う。さて、次の2巻ではいよいよ木曾義仲と源義経の活躍が読めそう。さらに鎌倉内に謀略の嵐が吹き荒れてくるころ。楽しみだなぁ。
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