こんな学校なら行きたい
小学生時代の子供というのは、大人が思うよりずっとナイーブな精神を持っていると思う。だから担任教師の影響はかなり大きい。ほとんどの科目を同じ教師から学ぶわけだからね。だけど教師だからといって、人格者とは限らない。
ボクの子供時代の教師は体罰が普通だった。「歯を食いしばれ!」と言われて廊下に並ばされて暴力を受けたことがある。さらにひどいのは無神経な『言葉の暴力』だろう。子供の家庭環境を無視したようなひどい発言を何度も耳にした。いまならネットで大騒ぎになっているはず。
もちろん素晴らしい教師もいただろうと思う。ボクもそう感じる教師が5年生と6年生の担任だったけれど、別の生徒や保護者からは「えこひいき」する先生だと学校に苦情が来ていたらしい。学校教育というのは難しいよね。
物語の世界だけれど、ここならボクも行きたかった感じる学校があった。読みながら何度もウルウルしてしまった。
2011年 読書#66
『第三 若草物語』L・M・オルコット著という小説。映画を観てからハマってしまった『若草物語』。全部で4冊の作品が刊行されていて、その第3作目を読了した。実はこの第3作から英語のタイトルが変わっている。
日本で出版されている第1作と第2作のタイトルは『Little Women』で、メグ、ジョー、ベス、エイミーの4姉妹を主人公とした物語。映画もこの2作が原作となっていて、主人公であるジョーの結婚で物語が終わる。
この第3作のタイトルは『Little Men』となっている。つまり主人公は少年たち。ジョーとフリッツのベア夫婦が経営するプラムフィールドの学校が物語の舞台。男女を交えた寄宿制の学校で、資産家だったマーチ叔母がジョーに残した豪邸を改造したもの。もちろんスポンサーとして支援しているのは、ジョーの妹であるエイミーと結婚したローリー。映画や原作を知らない人には誰のことなのかわからないだろうけれどwww
この学校にはジョーの息子であるロブはもちろん、メグの双子の子供であるデミとデイジーも暮らしている。エイミーの娘のベスはお金持ちのお嬢様なので、たまに遊びにくるだけ。それ以外に身寄りのない子供たちを含めて、15人くらいの大所帯。
ジョーとメグの子供たちも活躍するけれど、この物語の主人公格となる少年がナットとダン。ナットは貧乏な父と一緒にヴァイオリンを弾いで各地を転々としてたが、父が亡くなって路頭に迷っているところをローリーに保護された。彼の推薦でジョーの学校に入学する。
ダンはナットが流浪しているころに知り合ったスリの少年。不幸な生い立ちのせいか乱暴で集団生活に馴染めない。ダンのことを心配したナットによって、この学校に迎え入れられる、
いくつものエピソードがあって書ききれないけれど、子供たちの失敗や大騒ぎに笑いつつも、感動する物語がいくつも散りばめられている。ナットに関して言えば、彼は嘘をついてしまうという悪癖があった。悪気がないけれど、つい嘘をついてしまう。
そんなナットに対して、ジョーの夫であるフリッツはある提案をする。今度もし嘘をついたら、暴力で罰するといった。だけど罰せられるのはナットではなく、父親代わりの教師であるフリッツ。ナットは嘘をつけば、自分を信頼してくれるフリッツを殴らなくてはいけない。
どうしても我慢できずナットは嘘をついてしまった。そして約束どおりフリッツはナットに殴らせる。ナットは号泣しながらフリッツを殴った。自分を信じている人を悲しませただけでなく、暴力までふるってしまった。それ以来、ナットは二度と嘘をつかなくなった。
ダンは暴力と悪戯がひどく、ヤクザのような言葉も抜けない。だけどジョーは彼の心の優しさを見抜いていた。なぜならジョーの末っ子である幼児のテディーが彼を慕っていたから。そんな期待に関わらず、ダンは学校で火事を起こして一度は放校される。
だけど半死半生になってダンは戻ってきた。優しくしてくれたのはこの学校の友人とジョー夫妻だけだったから。このあとのダンの変身ぶりが素晴らしい。最終的にはジョーが最も信頼する少年へと変わっていく。
というように四姉妹の物語が、続編では少年たちを主人公とした内容に変わっている。もちろんローリーだけでなく、メグもエイミーも登場する。この作品で悲しいのはメグの夫であるジョンが亡くなる場面。
でも最終章の感謝祭の場面では、前作と続編のメンバーたちが一堂に集まる。とても幸せな気持ちで読み終えた作品だった。さて最後の第4作目はどんな展開になるのだろう。チラッと見たところでは、ナットやダンが成人しているみたい。楽しみだなぁ。
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