病の原因を改竄するのはヤバい
治療法が明確でない病気に関して、大勢の人が研究者からの朗報を待っている。科学者たちが病気の原因と治療法を見つけてくれることで、患者も家族も未来への希望を持つことができるから。
そんな病気のひとつにアルツハイマー病がある。症状や発症原因をひとつに絞れない複雑な病気。それでもあるタンパク質が影響しているという仮説は有名。医学にくわしくないボクでも、アミロイドβというタンパク質がアルツハイマー病に関与していることを見聞きしたことがある。これはほぼ定説として、多くの記事で引用されている。
ところがそのアミロイドβに関して、とんでもないことが公表された。
アルツハイマー病の原因はアミロイドβ、とした重要論文で画像操作の可能性が明らかに
アルツハイマー病の原因とされているアミロイドβに関して疑惑が発生している。もしかすると研究結果が捏造された可能性が出てきた。これはヤバい。
リンク先の記事によると、アミロイドβがアルツハイマー病の原因という論文が最初に発表されたのは2006年の3月。ミネソタ大学のレーヌ准教授らの研究チームの論文が科学誌の「ネイチャー」に掲載された。
やがてそれが定説のようになり、アミロイドβ対策の研究が進んできた。おそらく多額の資金と多くの人材が投入されているはず。ところが今年の7月になって、科学誌の「サイエンス」が21日付けの雑誌でこう発表している。
「この研究論文は画像操作され、結果が捏造されたおそれがある」と。
「サイエンス」にこの告発が掲載された経緯がリンク先の記事に書かれている。抜粋してみよう。
『この問題を告発したのは、米ヴァンタービルト大学の神経科学者マシュー・シュレーグ准教授だ。2021年8月にキャッサバ・サイエンシズ社のアルツハイマー病の実験薬「シムフィラム」を調査する弁護士から依頼を受け、この薬とその基礎となる科学に関して公開された画像を精査した。
その結果、2006年3月16日付の研究論文を含む数十本の研究論文で、明らかに改竄もしくは複製された画像が確認された。シュレーグ准教授は2022年1月、キャッサバ・サイエンシズに研究助成金を支給しているアメリカ国立衛生研究所(NIH)やネイチャーを含む出版社にこれらの疑義を伝えている』
「サイエンス」誌は他の研究者にも調査を依頼して結果をレビューした。するとシュレーグ准教授と同じ答えが返ってきた。20本以上の研究論文で疑義が見つかったらしい。
2006年に論文を発表したレーヌ准教授は、「サイエンス」誌の質問に回答していない。これはますます怪しい。
単なるデータの取り違いで済めばいいけれど、製薬会社と結託したような捏造だったら犯罪になってしまう。大勢の人が期待をかけている研究だけに、そのショックの大きさは計り知れないだろう。真相がわかるまでには、まだしばらく時間がかかるかもしれない。
結局つらい想いをするのは医師等の医療従事者、そして患者と家族だと思う。続報に注目したいと思う。
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