聖徳太子は捏造された?
昭和の高度経済成長時代に子供だったボク世代にとって、一万円札といえば聖徳太子。いまのお札より大きく、高額紙幣という風格があった。だからボクにとって聖徳太子は、富の象徴のような存在だった。福沢諭吉にも馴染んでいるけれど、やっぱりお札といえば聖徳太子だなぁ。
歴史好きのボクは、そんな聖徳太子が架空の人物の可能性があるという書物を読んだことがある。学校教育では依然として実在の人物として扱っている。だからこそその仮説に興味を惹かれた記憶があった。ただそれがどのような論拠だったのかすっかり忘れてしまった。
つい先日、Twitterでボクがフォローしている人がその仮説の書かれた本の感想を書いていた。ボクが以前に読んだ本と同じかどうか記憶にないけれど、もう一度内容を知りたくて読んでみることにした。
2022年 読書#75
『<聖徳太子>の誕生』大山誠一 著という本。聖徳太子が<>で囲われているのでわかるように、誕生の意味は捏造されたことを示している。とてもわかりやすく書かれている書籍で、読み終えた感想は明らか。
聖徳太子は捏造された、というのが最も納得できる結論だと感じた。
そもそも歴史といのは謎だらけ。16世紀の本能寺の変でさえ、いまだに真相についての論争が繰り返されている。ましてや7〜8世紀の古代史は、そのほとんどが謎に包まれていると言っても過言じゃない。だけどボクはこの古代史が大好き。
なかでも天武天皇の第3皇子とされる大津皇子の大ファン。悲劇の皇子だけれど、彼についての物語を本気で書きたいと思ったことが何度もある。でもどうも呪詛が絡んでいるようで、あまり関わらないほうがいいという気がしている。
聖徳太子は、この大津皇子よりさらに100年ほど昔の人物。当然ながら謎が多くて当たり前。ただこの本では、そうした謎が論理的に紐解かれている。これがなかなか面白い。興味のある人は、一読する価値のある本だと思う。
厩戸皇子は実在している。推古天皇の甥であったのは事実。ただ彼を聖徳太子という高貴な存在にまで持ち上げたのは、後世の人物による捏造だといのがこの本の主旨となる。その人物とは?
聖徳太子の時代から100年以上も未来に権力を手にしようとした藤原不比等。その捏造に加担したのが長屋王。天皇の権力集中を妨害しつつ、天皇を中心とした律令国家を作ろうとしていた不比等。そのためにはその威厳を証明する歴史書が必要だった。
日本には代表的な歴史書として『古事記』と『日本書紀』がある。ほぼ同時期に完成した歴史書。『古事記』は歴代の天皇について書かれたものだけれど、推古天皇で終わっている。ここがポイント。
厩戸皇子を神格化するために、『古事記』をこの段階で中断したという仮説。そして『日本書紀』によって本格的な捏造が行われたと著者は考えている。その証拠も提示されていて、ボクとしてはワクワクしながら最後まで読み進めることができた。
やっぱり歴史って謎が多くて楽しいなぁ。タイムマシンがあればその時代へ行って真相を調査できる。でもそうしないほうがいいのかも。謎だからこそ、あれこれと想像をめぐらせることができる。歴史の魅力はここにあるんだと思うなぁ。
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