高羽そらさんインタビュー

認知症老女の記憶が戻った

人間の『自我』というものは、言い換えれば『記憶』と表現してもいい。生まれてから現在まで積み上げた記憶によって、自分という存在を定義している。だからアルツハイマーのように記憶が欠損してしまうと、自分という存在が希薄になってしまう。その恐怖や不安感は、経験した人でないとわからないだろうと思う。

 

だけど認知症だからと言って、記憶が消えてしまったわけじゃない。脳の海馬には長期記憶が残されていて、それを自分の意思で取り出せないだけ。だから完全治療は望めなくても、なんらかの出来事がきっかけで消えたと思っていた記憶が戻ってくることもある。

 

もし戻ってきた記憶が、その人にとって人生の宝物のようなものだったとしたら。その瞬間の感動と喜びは想像を絶するものだと思う。フィクションだけれど、そんな感動の瞬間を描いた映画を観た。

 

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2022年 映画#119

『43年後のアイ・ラブ・ユー』(原題:Remember Me)という2019年のスペイン・アメリカ・フランスの合作映画。ハートウォーミングなストーリーで、観てよかったなぁと、しみじみ思う素敵な作品だった。

 

主人公はクロードという70歳の男性。演劇評論家の仕事をしていたけれど、引退して優雅な一人暮らしを堪能していた。妻は亡くしたものの、娘と女子高生の孫がいる。

 

そんなクロードは妻と知り合う前、熱烈な恋をした。リリィという舞台女優で、代表作はシェイクスピアの『冬物語』という作品。意気投合した二人は愛し合うけれど、リリィは人妻だった。結局は離婚できないリリィと別れることになる。それは43年前のことだった。

 

ある日クロードは、ネットでゴシップ記事を目にする。リリィがアルツハイマーを発症して施設暮らしをしているとのこと。それでこっそりと施設に侵入してリリィと再会した。だけど彼女の記憶は完全に消えていた。

 

そこでクロードは一大決心をする。娘や孫にはスペイン旅行に行くと嘘をつき、偽の診断書を作ってアルツハイマーを装った。そしてその施設に入所した。もちろん目的はリリィの記憶を取り戻し、43年前の恋人として再会すること。

 

涙ぐましい努力を重ねるけれど、リリィは記憶を取り戻さない。離婚はしていないので、月に2度は夫が面会に来る。困り果てたクロードはある作戦を決行する。施設の慰問で演劇鑑賞があった。それを利用することにした。

 

慰問に来る予定だった劇団を騙してキャンセルさせ、孫娘が所属している高校の演劇部を招いた。もちろん演目はリリィの代表作である『冬物語』。孫たちは熱演するけれど、急なことでセリフがきちっと入っていない。途中で完全に演技が止まってしまった。

 

そう、ここで感動の場面になる。いきなり立ち上がったリリィが、その芝居の続きを完璧に演じる。それまで過去の記憶を失っていたのに、代表作のセリフは記憶に残されていた。そして最後までその役を演じ切った。

 

そしてリリィは気づく。目の前に年老いた恋人のクロードがいることを。もうこの段階でボクの涙腺は崩壊。やがて二人は部屋に戻り、43年前のようにダンスをする。その姿は老人ではなく、まだ30代のころの若い二人。最高に素敵なシーンだった。

 

もちろんリリィには夫がいる。だからこの恋が実を結ぶことはない。だけどそれで終わりじゃない。リリィの夫がクロードに会い、感謝の言葉を伝えるシーンがある。もう一度彼女の人生を輝かせてくれてありがとう。リリィの夫はクロードにそう言って握手を求めた。

 

その後は満足したかのように、今までどおり暮らすクロードがカッコいい。現実にはあり得ない設定だけれど、心がポカポカに温まる素敵な映画だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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