ようやく親友の嫁が決まった
ブログのタイトルだと、まるでボクの友人が結婚したみたい。アラサーぐらいならそんなこともあるだろうけれど、ボクのように還暦の年代だとこんな話はほぼ皆無。どちらかといえば連れ合いと離婚したとか、死別したという情報しか入ってこないからね。
このタイトルは、ボクが大好きで追いかけているシリーズ小説のこと。だけど本気でよかったと思っている。
2022年 読書#76
『まったなし』畠中恵 著という小説。『まんまこと』シリーズという作品の5作目。昨年に8作目の最新刊が刊行されているので、ようやく追いついてきたという感じ。著者の作品では『しゃばけ』シリーズという妖怪が活躍する物語もある。どちらも大好きで、ここ数年で追いかけている。
『まんまこと』シリーズは、町名主の物語。町名主とは奉行所では裁けない住民の揉め事を解決する役目。現代で言えば家庭裁判所が近いかも。その町名主の後取り息子である高橋麻之助が主人公。
麻之助はぐうたら息子として町民には知られているけれど、実際はなかなかの切れ者。難解な揉めごとを、これまでの作品で見事に解決している。その独自の観察眼と推理力がこの物語の魅力で、シャーロック・ホームズに通じるところがあるような気がする。
麻之助には寿ずという妻がいたが、残念ながら娘を死産して彼女も亡くなっている。この第5作の麻之助は少しは元気が出たものの、まだ再婚する相手も出てこないし、本人もその気がない状態。
だけど今回は進展があった。それは親友の八木清十郎の嫁がようやく決まったから。二枚目で多くの女性と交際してきた清十郎。ようやく彼が妻を娶るというのが今回の物語の全体像。いつもどおり、6つの短編が収録されている。
『まったなし』
『子犬と嫁と小火』
『運命の出会い』
『親には向かぬ』
『縁、三つ』
『昔からきた文』
という6つの物語。内容は割愛するけれど、とにかく清十郎にはお安というピッタリの相手が見つかった。清十郎も町名主の息子だけれど、父親が他界していまは町名主として働いている。お安も町名主の娘なので、彼を支えていくのにちょうどいい相手。
清十郎の件はよかったけれど、もうひとつこれまで謎だったエピソードが明かされた。それは由有という女性の過去。彼女と麻乃助は思い合っていた仲だった。由有は二歳年上。ところが彼女は清十郎の父親に嫁いでいた。なぜならお腹に子供がいたから。
清十郎の父は、自分の子供でないことを知って由有を後妻にした。それは理由があったから。そのことが今回の物語で明かされている。由有は縁談を迫ってきたある男にレイプされ、それで子供を身籠もっていた。
ところが麻乃助はまだそのとき16歳だった。だから子供の父親として由有と結婚する度胸がなかった。彼女をレイプした男は、自分の子供がいることを知れば結婚を迫ってくる。由有の父親が札差を営んでいる金持ちだったから。ということで由有と子供を守るため、清十郎の父が後妻にしたというのが真相だった。
だけど清十郎に嫁が決まったことで、由有は新しい男性に嫁ぐことになった。なぜならまたレイプ男が江戸に戻ってきたから。結局、麻乃助は彼女の幸せを祈るしかない。ちょっと切ない展開だったなぁ。
さて麻乃助の再婚はどうなるのだろう? どうやら昨年に刊行された最新刊では何か進展があったみたい。とりあえずそこまで我慢するしかないなぁ。
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