映画が不評な理由がわかった
ある映画を観て、なかなか面白いとボクは思った。ところが他の人の感想をのぞいてみると、不満を覚えている人が多い。かなりひどい言葉で酷評している人もいた。それでどうしても気になって原作を読んでみた。そしてその理由がわかったような気がする。
2022年 読書#77
『燃えよ剣』司馬遼太郎 著という小説。この作品の映画は1966年と2021年に公開されている。ボクが観たのは2021年版。新撰組の土方歳三を描いた物語で、映画では岡田准一さんが土方を演じ、恋人のお雪を柴咲コウさんが演じていた。
本当によくできた映画で、ボクは本気で面白いと思った。だけど不評の多さが気になって原作を読んだ。この本は2021年の映画化に合わせて刊行されたものだと思う。本来なら上下巻に分かれる長さのはず。とにかく長い。
2段書きになっている単行本で、700ページ近くもある。読み切るのに5日もかかってしまった。そして最高に面白い小説で、ボクはすっかり土方歳三のファンになってしまった。昔は新撰組が嫌いだったんだけれどwww
司馬遼太郎さんが書く幕末作品として、もっとも有名なのが『竜馬がゆく』という作品。ボクは最初にこちらを読んだので、龍馬ファンになり、かつ敵方になる新撰組が好きになれなかった。だけどもし『燃えよ剣』を最初に読んでいたら、まちがいなく土方歳三の大ファンになっただろう。
最初に書いたようにとても長い物語。土方がまだ無名の時代から、函館で戦死するまでが描かれている。そもそも2時間程度の映画の尺に収めることが難しい。だから映画以外にもドラマ化されていたのだろう。
映画の土方も素敵だったけれど、原作の彼はもっと魅力的。新撰組を作り上げたのは彼であり、近藤勇のように政治家的な行動を取らない根っからの武闘派だった。まだ江戸にいたころ、命をかけた喧嘩のシーンだけでもワクワクする内容だった。そして土方のそばには、いつも沖田総司がいた。いいコンビだよね。
原作の土方は映画より人間くさい。夜這いはするし、残酷な一面も隠さない。かといって女性に関しては潔癖なところもある。土方が新撰組の名を日本中に知らしめたのは事実だし、それに関するエピソードも数多くある。だから映画では必然的に新撰組での場面が中心になる。
だけど土方の真骨頂は戊辰戦争になってからだと思う。原作でもそのときの彼が最高にかっこいい。鳥羽伏見の戦いで、薩長が最新兵器を使っていることにショックを受けた。だけどそこからの切り替えが早い。近藤や沖田が死んだあとも、彼は洋式の軍服を身につけ、フランス式の最新兵法を完璧に学んだ。そしてそれを実践に活かすことで、官軍を恐怖に陥れている。
でも映画ではこの部分をサラッと触れているだけ。確かに原作のファンはガッカリするだろう。最大の見せ場なんだから。さらに恋人のお雪の扱いも不満を感じてしまった。原作では新撰組に恩義を感じている鴻池財閥の船でお雪は土方に会いにくる。
それが永遠の別れだと知っていて、軍艦の中で逢瀬を重ねる。土方はお雪を鴻池に任せ、決戦の地である函館へ向かう。でも映画のお雪は函館までやってきて、彼の死に立ち会う。土方という男の生き様が、映画では中途半端な恋愛物語のようになってしまった。これはファンなら怒るだろう。
結論から言えば、圧倒的に原作のほうが面白い。ボクは相変わらず坂本龍馬のファンだけれど、薩長の志士たちは以前から好ましく思っていなかった。この作品を読んで、薩長の連中がますます嫌いになったなぁwww
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