鎌倉殿の奮闘ぶりが面白い
今日は日曜日。ということは毎週楽しみにしている『鎌倉殿の13人』が放送される。ボクの場合は録画鑑賞なので、いつも1日から2日ほどずれての視聴になるけれど楽しみにしている。
源頼朝亡き後、二代将軍の頼家は病で意識不明。そこで後継者をめぐって北条と比企が争い、北条の勝利となった先週。次の将軍に頼家の弟である後の実朝を立てようとしていた矢先、頼家の意識が戻ったというのが先週のラスト。いやぁ、なかなか面白い展開だよね。史実を知っていても楽しめる。
そんな鎌倉幕府、つまり北条氏の実態をもっと知りたくて、ドラマをきっかけにしてある本を読んでいる。終わりまで先は長いけれど、ようやく第3巻を読了した。
2022年 読書#78
『現代語訳 吾妻鏡3 幕府と朝廷』五味文彦・本郷和人 編という本。北条氏が残した記録書である吾妻鏡の現代語訳の読破を目指している。現代語訳といっても日々の出来事が淡々と書かれているので物語性はない。だけど史実を知っていることで、無機質な文章がかえって想像力を掻き立てる。
今回は文治2年(1186年)と文治3年(1187年)の記録が収録されている。日本史的にいえば平家が滅んだあとで、義経が兄の頼朝に謀反の疑いをかけられ、必死になって逃げている時代。歌舞伎の『勧進帳』と重なるころで、文治3年には義経が欧州の藤原秀衡に匿われている。
同じ年に秀衡が亡くなっているので、この次の吾妻鏡では義経追討のために鎌倉幕府が奥州に兵を派遣することがメインになるだろう。今回は義経を探しながらも、鎌倉幕府が武家政権としての基盤を築こうとしていることがわかる内容だった。
タイトルにあるように、朝廷とのやり取りが多い時代だった。謀反人となった源義経と源行家を捕縛するため、頼朝は全国に守護・地頭の設置を朝廷に認めさせる。これこそが武家政権への最初の足がかりとなる。それゆえ幕府と朝廷との文書が多く掲載されていた。
まだ鎌倉幕府は武家政権として磐石とは言えない。公家に代わって本格的に政権を支配するのは、この後に起きた承久の乱以降のこと。そのとき鎌倉と対立する後鳥羽上皇はまだ天皇の時代。後白河法皇も生きているから、頼朝も懸命に探りを入れているころ。
とにかく頼朝がよく働く。鎌倉殿の奮闘ぶりが感じられて面白かった。守護・地頭を設置しても、幕府の意向に沿わない連中もいる。京都でも盗賊が多く、治安が乱れていた。だから頼朝は何度も厳しい命令を出したり、盗賊の取締りのために北条時政を京へ向かわせたりしている。
その過程で少しずつ朝廷に圧力をかけて、幕府の威光を見せつけようとしているのを感じる。それまでの貴族の感覚では、武士というのは番犬のようなものだった。その番犬であるはずの平家が牙を剥いて権力を手にした。
源氏によって平家は滅ぼされたけれど、朝廷としてはまだ武士を番犬だと考えている。それゆえ乱暴者が現れると取締るように幕府に指示を下す。そうして貴族の領地を守りつつ、武力による影響力を高めていこうとしていた。その過渡期の時代で、とても興味深い内容ばかりだった。
ドラマではさらっと流されているけれど、頼朝が精力的に仕事をしていたことが吾妻鏡を読むとわかる。それだけに二代目の頼家はプレッシャーに押し潰されたんだろうなぁ。さて、いよいよ次は義経の最後。また近いうちに読もうと思っている。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。