フランケンが怪物になった理由
今日は今週でもっとも憂鬱だった用事を片付けた。家を出たときは土砂降りの雨で、現地に到着したときは靴の中までびしょ濡れ。さすがに帰りたくなったけれど、なんとか予定どおりに厄介ごとを片づけた。明日、もう一度チェックをすませば完了。
そんな疲れたボクの気持ちを盛り上げてくれたのは、先月の末にリリースされたこのアルバム。
ずっと楽しみにしていたブラックベアーのニューアルバム。2年ぶりのアルバムで『in loving memory』というタイトル。ブラックベアーはとても多才なミュージシャンで、彼とのコラボ曲を出しているアーティストが後を絶たない。
とにかくジャンルに影響されない懐の深さがあって、彼の音楽をあえて名づけるのならポップパンクとなるそう。まぁ、ジャンルなんてどうでもいいよね。まだ2回しか聞いていないけれど、素晴らしいという言葉しか出てこない。しばらくはヘビロテをして、じっくりと聞き込んでいく予定。
さて、このジャケットで連想するのが死体。その死体が蘇るという有名な物語に『フランケンシュタイン』という作品がある。この作品が出版されたのは1818年で、日本は江戸時代というころ。とても恐ろしくて切ない物語だけれど、この作品の著者が女性だと知っているだろうか?
その『フランケンシュタイン』の生みの親である女性作家の半生を描いた伝記映画を観た。
2022年 映画#133
『メアリーの総て』(原題:Mary Shelley)という2017年のアイルランド・ルクセンブルク・アメリカの合作映画。その女性作家の名前はメアリー・シェリーで、エル・ファニングが演じている。
このメアリーという女性の人生は実に激動。そんな難しい役をエル・ファニングが完璧に表現していた。メアリーの母はイギリスのフェミニズムの創始者で、父は思想家だった。だけど母はメアリーを産んですぐに亡くなり、父は再婚して妹と弟がいる。
メアリーは母の影響を受けて型にはまらないところがあり、継母とぶつかってばかり。そんなときメアリーはパーシーという詩人と知り合う。彼には妻子があったけれど、二人は駆け落ちした。面白いのはその駆け落ちに、メアリーの妹のクレアも同行している。不思議なんだけれど実話らしい。
パーシーは裕福だったけれど、駆け落ちしたことによって父親から勘当される。当然ながら経済的に困窮することになり、どうにかこうにか暮らしているという状態。それでも妹のクレアがバイロン卿という詩人の子供を妊娠したことで、彼が所有するスイスの別荘に招かれる。
この別荘こそが『フランケンシュタイン』の生まれるきっかけになった場所。メアリーたち以外にも、ポリドリという医師がいた。この別荘で怪奇談を構想することになり、メアリーは『フランケンシュタイン』の構想を得る。
面白いのは『吸血鬼』というドラキャラの原点となる作品も、この別荘がきっかけで生まれている。これはとても有名な話で、原案を考えたのはポリドリだった。だけどその構想をバイロンがパクったことによって、彼の作品として世に出てしまった。それゆえ、ポリドリは後に自殺している。
とにかくメアリーはこの別荘での経験をもとにして『フランケンシュタイン』を書き上げた。なんと脱稿したのは彼女が18歳のとき。最初は匿名で出版され、夫になった詩人のパーシーの作品だと思われていた。だけど第2版が出るときには、著者名として彼女の名前が印字されるようになった。
なぜ18歳の若い女性が、こんな恐ろしくて悲しい物語を書いたのか。それはこの映画を見ればわかると思う。夫のパーシーとうまくいっていたわけではなく、さまざまな出来事か起きる。それゆえ『フランケンシュタイン』というキャラを創造したとき、メアリーは怪物としてしか描けなかった。
それほどメアリーは過酷な人生を経験し、孤独と絶望に苦しんでいたから。彼女の生き方に興味を持ったので、まだ読んだことがなかった『フランケンシュタイン』を読んでみようと思う。そうすれば彼女の人生と重なっている部分を実感できるだろうと思う。
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