自作を守りたい想いに共感
小説を書いていて思うのは、完成した作品がただただ愛しいということ。他人に評価されなくても、駄作だとけなされても、完成した段階で自分の分身のように感じる。だからボツになった作品であっても、ボクのパソコンでは大切に保管されている。
小説でなくても美術や音楽を通して自分の作品を創作している人なら、ボクの気持ちをわかってもらえると思う。そしてそんな自分の作品を愛する人なら、主人公の行動に共感してもらえるだろうと感じる映画を観た。
2022年 映画#136
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(原題:Les traducteurs)という2019年のフランス・ベルギー合作映画。いわゆるスリラー作品で、犯人は『人質』を取って多額の金銭を要求してくる。正確に言えば『人質』は人ではなく、ベストセラー小説の完結編原稿だった。もしかしたら、ボクが今年観た映画で最高作になるかもしれない。本当に面白かった。
世界的なベストセラーである『デダリュス』という小説の第3弾となる完結編の出版が発表された。世界中の人が待ち望んでいる作品で、誰もが結末を知りたがっている。そこで出版社のオーナーは、翻訳本を含めた世界9カ国で同時発売をすることに決めた。
そして9人の翻訳家がフランスの田舎町にある、要塞のような建物に軟禁状態になる。高級ホテルのような豪華な部屋と食事、一生かけても観終わることのない映画のソフト、図書館のような蔵書、そのうえボーリング場まであるという最高の環境。
ただし最終作品の流出を防ぐため、9人の翻訳家たちはスマートフォン等のデジタル機器を没収。家族との連絡も禁止され、1日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく。原稿は出版社のオーナーだけが管理していて、誰も手を触れることができない。二ヶ月して9ヶ国語の翻訳が完了したら、翻訳家たちは解放されて報酬を受け取ることができる。
ところが翻訳作業が始まってすぐ、出版社のオーナーは脅迫を受ける。「冒頭10ページをインターネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」というメールだった。
完結編の内容を知っているのは、オーナーと9人の翻訳家だけ。つまりその9人の中に犯人がいるということ。オーナーは最初の20ページを渡した段階でストップをかける。こうすればそれ以降の内容が流出しないだろうと考えたから。
ところが犯人の要求は止まらず、本当に次の100ページが公開されてしまう。ネットに繋げない環境にいるのに、なぜオーナーにメールを送ったり原稿を公開できるのか? パニックになったオーナーは、9人から快適な生活を取り上げて極限状態に追い込んでいく。
当然ながら9人の中でも犯人探しが始まる。その結果、絶望したデンマーク語の翻訳者の女性が自殺してしまう。というような展開で犯人が明らかになっていくけれど、よく練られたストーリーで最後まで画面に釘付けになった。
推理好きな人なら、この物語に隠されたトリックがわかるだろうと思う。でも分かっていても面白い。本当はここで書きたいところだけれど、比較的新しい映画なのでネタバレはやめておこう。
最後まで観れば犯人の行動に共感できるし、出版社オーナーの悪事も明らかになる。ハリウッドでリメイクしても面白い作品になると思う。ちなみにロシア語の翻訳者として出演しているオルガ・キュリレンコを久しぶりに観れたのも良かった。相変わらず超美人だよなぁ。彼女の美貌を観ているだけでもお得な映画かもしれない。
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