『吾妻鏡』が面白くなってきた
NHKの大河ドラマというのは、歴史を勉強するきっかけを与えてくれることが多い。ドラマを観ることで人物像のイメージが明確になるので、その時代に親しみを持つことができるから。そのついでにドラマだけでなく、他の資料で勉強するとより理解が深まる。
ということで去年から今年にかけて『平家物語』の現代語訳を読んだり、毎朝少しずつだけれど吉川英治さんの『新・平家物語』を読み進めている。その小説では、まだ源頼朝が挙兵する前だけれどね。
そして鎌倉幕府が残した記録書である『吾妻鏡』の現代語訳にも挑戦している。といっても全部で16冊もある大作なので、まだまだ先は長い。でも今回の4冊目を読了したことで、この記録書の面白さがわかってきたような気がする。
2022年 読書#85
『現代語訳 吾妻鏡4 奥州合戦』五味文彦・本郷和人 編という書籍。前回はまだスタートしたばかりで手探り状態の幕府と、その権力を警戒している朝廷とのやり取りが中心だった。
今回の第4弾は文治4年(1188年)〜文治5年(1189年)の出来事が書かれている。タイトルからわかるように源義経が殺され、奥州藤原氏が滅亡した時代。学校の歴史で習った1192年の前なので、鎌倉幕府の立ち上がりの時期だということがよくわかる。
記録書の現代語訳なので、相変わらず読みづらい。だけどじっくり読んでいくと本当に面白い。頼朝が武士の棟梁として領地争い等を積極的に裁いている様子がよくわかる。妻の政子との夫婦関係も垣間見えて、人間としての頼朝を感じることもある。
義経の死については、思ったより簡潔に記されていた。ドラマでは小栗旬さん演じる北条義時が、奥州に出向いて義経暗殺の画策をしている。もちろん命令したのは頼朝。あくまでも藤原氏が義経を殺すように仕向けること。つまり頼朝としては、最初から奥州制覇を狙っていたから。
『吾妻鏡』では藤原泰衡が義経を誅し、彼の首を鎌倉まで運ばせたことが記されていた。朝廷としてはこれで完了。これ以上の戦はやめるようにと、後白河法皇の院宣が出ている。ところが最初に書いたように、頼朝の目的は奥州藤原氏を滅ぼすこと。
鎌倉幕府から何度も藤原氏追討の院宣を出すように願い出る。ところが後白河法皇は承知しない。どうするかと思っていたら、頼朝は朝廷を無視して鎌倉幕府の大軍を奥州に動かした。朝廷なんてはなから無視している。このあたりは興味深いところ。
最終的に藤原氏が滅んだ時点で、後白河法皇は藤原氏追討の院宣を出している。後追いになったけれど、頼朝の意向を尊重したことになる。ここにも朝廷と幕府の力関係が見えて面白い。頼朝という人は偉大で、この時点で朝廷の力を抑え込んでいたということ。
つまり頼朝の病死は、朝廷側の再起のきっかけになる。それが結果として後鳥羽上皇の承久の乱へとつながるのだろうけれどね。
今回もうひとつ面白かったのは、欧州攻めの先陣争い。先陣の命を受けたのは畠山重忠だった。ドラマではイケメンの中川大志さんが演じている。ところがそれに割って入ったのが和田義盛。山越えをして畠山勢を追い越し、先に藤原氏の本陣に攻め込んでいる。ドラマで演じているのは横田栄司さん。
この場面を読んでいて、頭に浮かぶのは中川大志さんと横田栄司さんの二人。ドラマでも言い争うことが多く、歴史上の戦でも同じように言い争っていたらしい。そう思うと、三谷幸喜さんの脚本の素晴らしさを改めて実感してしまう。
さて次回はいよいよ頼朝が征夷大将軍になるはず。『吾妻鏡』の現代語訳は全部で16作品もあるので、まだまだ先は長いぞ。
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